てんびん座
懐かしくも新しい現在
ビジョンは偶然から開ける
今週のてんびん座は、「魚跳ねて地上に梅の満ちにけり」(日隈恵里)という句のごとし。あるいは、時の関節が外れていくような星回り。
芭蕉の「行く春や鳥啼き魚の目は泪」の句では、過ぎゆく春の名残惜しさに「魚」は水中で目に涙を溜めていましたが、掲句では梅の開花とともにこれから本格的に到来するだろうという春の実感を、「魚」が水面に躍り出ることで表現してみせました。
それもまるで、その「魚」の一跳ねによって、スイッチが冬から春へと切り替わるように、一挙に梅の花が地上に満ちたかのように。
もちろんこの場合の魚と梅は、直接的な因果関係にあるわけではなくて、あくまで「魚」が、開花した梅が地上を埋めつくしていくその瞬間に“たまたま”同時に居合わせただけではありますが、ただその偶然は、過去にもそんなことがあったであろうと確信させるような“継起的な偶然”であり、さらに現在の出来事が過去へと回帰し、過去の出来事が現在に再現されているような円環構造をもつ“円環的偶然”でもあるのではないでしょうか。
17日にてんびん座から数えて「ビジョンの開け」を意味する11番目のしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、ちょっとした偶然を介して過去と現在と未来が繋がりあっていくような、懐かしくも新しい瞬間を体験していくことができるかも知れません。
遠い過去とそう遠くない将来を結ぶこと
もう少し分かりやすい言い方をするならば、今週のてんびん座は「自分がいかに幸せか、優れているか」といったエゴの関心事よりも、もっと価値があること、大切なことに気付いていくことがテーマになっているのだと言えます。
それはあなたが社会のノイズにまみれる以前に、漠然と抱いていた思いや欲求であったり、何か誰かから受け取ったり、受け継いだりしたものかも知れません。
いずれにせよ、なにか具体的な成果を画策するといったことより、これまであまり自分と関連付けてこなかった全体の動き―例えば生物の陸上への進出などに対して、何らかの自分との「繋がり」を感じ、自分なりの手応えや確信を強めていくことが肝要です。
私たちの遠い祖先は水中から陸上へと上がり、そのまま陸を主戦場としたのは何のためなのでしょうか。そして、それとこれからあなたがやろうとしてしていることはどう繋がっていて、はたまたどう関係していないのか。
今週のてんびん座は、空間的にも、時間的にも発想のスケールを拡大してみるといいでしょう。かえってその方が現在の自分に対してより深く愛着を覚えられるはずです。
てんびん座の今週のキーワード
継起的偶然から円環的偶然へ