てんびん座
透明な不在
原動力としての渇望
今週のてんびん座は、「冬ざれやものを言ひしは籠の鳥」(高橋淡路女)という句のごとし。あるいは、内面においても冬が深まっていくような星回り。
沈黙が続くなか、言葉を発したものがあった。しかし、言葉を口にしたものは、人間ではなく、飼っている鳥であった。窓の外は見渡す限り、冬らしくひっそりとしていて、いつも以上に寂れているように感じられた。
これは人恋しさを確かめている句でしょう。「鳴きし」ではなく、あえて「言ひし」としているところからも、誰かと言葉を、それもできるだけ何気ない、ごく自然な会話を交わしたいという気持ちが溢れてかえっています。
作者は結婚の翌年に早くも夫と死に別れており、掲句においても、その夫の不在を改めて確かめているところがあったように思います。
しかしそうした渇望こそが、飯田蛇笏が女流界一とも評した大正期を代表する俳人としての活動の原動力ともなっていったのではないでしょうか。
12月4日にてんびん座から数えて「コミュニケーション」を意味する3番目のいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした言葉への渇望を痛感していくことになるかもしれません。
淋しさの区別
遊びであれ、仕事であれ、恋愛であれ、どこかに未練を残してしまう人というのは、自分で思っているほど自分が演じようとしている役柄にハマり切れてないのではないでしょうか。
そういう人は向きあう対象や演じている役柄のことなど本当はあまり関心がなく、ただ「淋しい」のです。自分が感じている淋しさに囚われてしまって、それしか見えていないか、どうしてもそこから目を逸らせない。
「淋しさ」という言葉を辞書で引くと、「あって欲しい物がない、居て欲しい人がいない、などの理由で物足りなさやつらさ、心細さなどを覚えるさま」と出てきますが、あって欲しいものも居て欲しいものもはっきりしていない淋しさというものもあります。
そういう淋しさは打ち消そうとしても決して打ち消すことはできない。ただ、それとなく付き合っていくしかないのです。
今週のてんびん座は、そうした幾つかの異なる淋しさの区別を特に心がけていきたいところ。
てんびん座の今週のキーワード
そこはかとない淋しさ