てんびん座
苦しみにひかりを当てる
彼岸へ至る前準備
今週のてんびん座は、「秋彼岸濯(ゆす)ぎ慣れたる川瀬あり」(友岡子郷)という句のごとし。あるいは、心の奥の方がすーっと透き通っていくような星回り。
「彼岸」はサンスクリット語の「波羅密多(完全な修得)」から来た言葉で、すなわち、迷いと煩悩の世界である此岸から離れた向こう側の世界(悟りの世界)である彼岸へと到達できるという意味。
流れがゆるやかな川瀬を見て「濯ぎ慣れたる」とは、もはや現代人には想像もつかない連想ですが、洗濯機が登場する以前は川で洗濯をしていたのであり、掲句もそれが習慣だった頃を思い出して詠まれたもの。
秋も深まってくると、手を浸す水の感触もひえびえとしてくる。子どもの頃の母の思い出なのか、親しさや懐かしさとともに、住み慣れた地で過ごした月日や記憶のなかの情景が、不意に鮮やかに蘇ってきたのでしょう。
かつてうごめいていた情念は薄らぎ、過去の記憶にこれまでとは別な方向から明るいひかりが当たったのかも知れません。
9月23日に自分自身の星座であるてんびん座へ太陽が移る秋分を迎えていく今週のあなたもまた、水澄みそめる秋の水のように、意識のひかりを遠くへと届かせていきたいところ。
よろこびと苦しみの果て
よろこびと、苦しみとが、同じぐらいの感謝の思いを生じさせるならば、神への愛は、純粋である
とは、かのシモーヌ・ヴェイユの言葉ですが、これはおそらく「神への愛の純粋さ」だけでなく、自分の人生に対する覚悟においても、同じことが言えるのではないでしょうか。
表現の中に自分の本音をあっけらかんと込めていくことを、「赤裸々」などと言いますが、
覚悟をもって何かを書くという行為も、本来おそらくヴェイユくらい赤裸々でなければ難しいのではないかと思います。
ただ一方で、例えば先の「川瀬あり」という句の作者ならば、自分の経てきた苦しみにも、同じくらいの感謝をしたはずという風にも感じられてくるのです。
願わくば、今週のあなたもまた、彼らのように自分に正直に、そして誇り高くあらんことを。
てんびん座の今週のキーワード
未来へ移り行く者のつとめ