てんびん座
異郷幻視
こちらは8月9日週の占いです。8月16日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
風が吹いて都市がうまれる
今週のてんびん座は、「みなみかぜ貝殻は都市築きつつ」(九堂夜想)という句のごとし。あるいは、すでにかけてしまっている色眼鏡をすこしズラしていこうとするような星回り。
湿っていて暑苦しい夏の季節風である「みなみかぜ」は、もともとは船乗りの使っていた言葉だったのだとか。ひらがなに開かれたことで、どこか遠野物語のような異郷の幻想譚の雰囲気さえ漂う一句。
句中の「貝殻」とは海沿い岩場に群生しているものなのか、浜への漂流物なのか、それとも海の家で食べ終わった後に皿の上に積まれたものなのか定かではありませんが、湿った温風を受け、それまでとは別種のいのちを授かっているかのような印象を受けます。
そこには人間が築いたものとは異質な「都市」が築かれ、そこでは私たちの想像を超えた、じつに豊かな社会的生活が展開されているのかも知れません。
人間には人間の、貝殻には貝殻の生があり、社会がある。数十年どころか数百万年、いや数億年来にわたって保持されてきた習俗には必ずや深い意味があるのではないでしょうか。
てんびん座から数えて「中長期的な展望」を意味する11番目のしし座で8月8月夜に新月が形成されたところから始まる今週のあなたもまた、いつもとは少し異なるアプローチから豊かさや平和について考えてみるべし。
神的なものを呼び込む
「貝殻は都市を築き」と言うとき、貝殻は実際に現場労働をする主体というより、「依代」のような位置づけにあるのではないでしょうか。すなわち、祭りの際に神が降臨するための柱を立て、その先端に祭りに縁のあるものを取り付け、神への目印としたものを、民俗学の言葉で「依代(よりしろ)」ないし「標山(しめやま)」と言います。
依代として使われるものには貝殻の他にも、岩石や宝石、野獣の牙、人形などさまざまなものがありますが、やはり樹木が圧倒的に多く、海辺ではタブの木、山地では榊や椿の木など、いずれも東アジア大陸につながる照葉樹が使われてきました。つまり、こうした風習は農耕文化圏に特有の、稔りや豊かさを呼び込むための祭礼だった訳です。
これは「この地で自分たちは豊かさを得るのだ」という決意を固めていくための儀式でもあり、そうした儀式を共同体レベルで共有していくことで、言葉だけでなく実際的な行動レベルでそれを実行していくことを自分たち自身に促していったのでしょう。
その意味で、今週は儀式のフォーマットを自作し、実践していくくらいのつもりで過ごしてみるといいかも知れません。
てんびん座の今週のキーワード
DIY儀式