てんびん座
完璧であるよりも、程よくあろう
馬は一つの宇宙を駆け巡る
今週のてんびん座は、ジュゼッペ・カスティリオーネの『百駿図』のごとし。あるいは、自分なりの「完成形」を思い描いていくような星回り。
18世紀前半の北京の宮廷内にあったアトリエ「綺絴宮(きしょうきゅう)」にて、中国人画家たちと仕事をしたイタリア人画家カスティリオーネは、東アジア特有の画題である「百駿図」、すなわち百頭の馬の絵を、ヨーロッパの強い陰翳法によって馬の筋肉の動きや馬飼いたちの衣装の襞もことごとく克明に描いてみせました。
そこで馬はたたずみ、草をはみ、腹ばいになり、横たわり、仰向けになり、走り、喧嘩し、じゃれ合い、木の肌にからだをすりつける。それらが、前向き、後ろ向き、横向き、足を交差させたりふんばったり、そして白、茶、灰色、ぶち、黒の色や、さまざまな方向、ポーズ、模様のバリエーションで組み合わされ、その組み合わせは、いよいよ百ぐらいの数に達していくのです。
こうして描きあげられた百図も、描く側に立って考えてみると、モデルは一頭の馬で十分だったろうことに思い至ります。一が百となり、百は一へ帰っていく。『百駿図』の中には「たった一個の存在の中にも全宇宙がある」というすぐれて東洋的な発想があったのです。
同様に、10日にてんびん座から数えて「社会的到達点」を意味する10番目のかに座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、どこまでいったらorやったら自分は“上がり”なのかというゴール設定をいったん刻み込んでいくことがテーマとなっていくでしょう。
“ちょうどいい状態”を目指す
男女の和合は、図形でいえば伝統的に「六芒星」に象徴されますが、今週のてんびん座はそうした和合への感性をいかに深めていけるか、ということがテーマなのだとも言えます。
この六という数字は、一+二+三であると同時に、一×二×三でもあり、最初の完全数として美の象徴とされ、現代では空気清浄機のフィルターや新幹線の床材に使われるハニカム構造としても使われています。
日本では六角形と言えばまず亀の甲羅であり、出雲大社の亀甲紋が知られていますが、また伊勢神宮の伊雑宮の神紋でもあります。いずれも、極端な陽や陰ではなく、それらが適度に混ざりあった“ちょうどいい状態”なのだと理解しておくといいかも知れません。
うまくそうした感覚を研ぎすませておくことができれば、あなたは機を見るに敏、どこかこれまでとは異なる新しい人生がスタートしている感覚を掴んでいくことができるはず。
あるいは、偶然のゆらぎの中でどう動くべきか、またどこに関しては触れずにいるべきかが直感のような形で自然と浮かんでくることもあるかも知れません。美、おめでたいこと、ちょうどいい状態、そういうものに着目していきましょう。
てんびん座の今週のキーワード
生きた宇宙には必ず欠けがある