てんびん座
ひかりかがやく青二才
「あお」と「あを」
今週のてんびん座は、「水ぬるむ日のあをいろを鳥に巻く」(小津夜景)という句のごとし。あるいは、改めていろいろな可能性を身に宿していくような星回り。
春は光あふれる季節であり、人の服装だけでなく、野山がさまざまな色に彩られていきますが、掲句に出てくる「あを」とは実はとても古い言葉で、「青(あお)」でもなくかと言って「赤(あか)」でもないさまざまな色みや状態を指していました。
例えば、現代でも未熟で経験の浅い人などを「青二才」などと呼びますが、これもかつて使われた「あを」の名残りであり、ここではもはや混ざり気のない真っ白ではなくなったものの、まだはっきりとしたカラーを持つにはいたっていない状態が暗に含まれています。
すなわち、「水ぬるむ」ことによって、新たな季節の到来とともに、微妙であわい、中間的なこの世界の質感が呼び出され、それが花のようにはっきりと観察することが難しい鳥のうちにこそ宿りつつあることがそっと告げられているのです。
13日にてんびん座から数えて「物事の過程や工程」を意味する6番目のうお座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、どんな自分さえも道半ばである限り、滑稽などということはないのだということに気が付いていくことでしょう。
遠い過去とそう遠くない将来を結ぶこと
別の言い方をするならば、今週のてんびん座は「自分がいかに優れているかを証明すること」よりも、もっと価値があること、大切なことに気付いていくことがテーマになっていくのだと言えます。
それはあなたが社会のノイズにまみれる以前に、漠然と抱いていた思いや欲求であったり、何か誰かから受け取ったものであるかも知れません。
いずれにせよ、なにか具体的な成果を画策したりといったことより、これまであまり自分と関連付けてこなかった全体の動き―例えば生物の陸上への進出やなどに対して、何らかの自分との「繋がり」を感じ、自分なりの実感を深めていくことが肝要です。
私たちの遠い祖先が水中から陸上へと上がり、そのまま陸を主戦場としたのは何のためだったのでしょうか。それと、これから自分がやろうとしてしていることはどう繋がっているのか。そうしてスケールを拡大してみれば、私たちは誰しもが青二才であるはずです。
今週のてんびん座は、そうして改めて遠い過去とそう遠くない将来を結びつけていこうとしているのかも知れません。
今週のキーワード
すべてが最中である限り滑稽などということはありえない