てんびん座
不安の海を漕いでいく
一寸先は闇
今週のてんびん座は、「わが夏帽どこまで転べども故郷」(寺山修司)という句のごとし。あるいは、新しい世界に飛び出していきたいという気持ちが不意に膨らんでいくような星回り。
とつぜん吹いてきた風に飛ばされた帽子をあわてて追いかけた。そんな、誰もが経験したことがあるだろう場面を詠んだ句。
ただそこには、帽子を追いかけてやっと拾い上げて元の通りになれたという、どこかホッとした安堵感と同時に、もう一つの相反する感情が気配のように漂っています。
すなわち、できれば故郷の外へ、まだ見ぬ新しい世界へとそのまま転がっていって欲しかったという願いと、それがかなわかったことへの失意です。
この句が作られたのは、作者が高校卒業後に上京する前後です。もちろん、すべてを作者の実際の境遇と結びつけることはできませんが、この安堵と期待の双方のあいだで揺れ動く混濁した意識は、どこか今のてんびん座にも通じるところがあるのではないでしょうか。
7月5日にてんびん座から数えて「感情の囲い」を意味する4番目のやぎ座で満月が起きていく今週のあなたにおいても、これまではそこで安寧を得ていた心理や成長過程がもはや終わりを迎えつつあることが実感されていくはず。
人生という戒壇めぐり
善光寺本堂の地下へと誘う入口を降りていくことで始まるお戒壇めぐりは、ご本尊である阿弥陀如来様の真下にあると言われる「極楽の錠前」に触れることで来世にご利益があるとされています。
ただ実際に行ったことのある人なら分かると思うのですが、とにかくめちゃくちゃ怖いんです。きっと「一寸先は闇ってこういうもんか!」とここで初めて実感する人もいるでしょう。
文字通りの闇の中を前進していく心理的抵抗感はかなりもので、壁にすがったまま動けなくなってしまう人や、一緒に来た人の名前を連呼したり、会話し続けようとする人などが後を絶えません。
ただし、人生という戒壇めぐりでは、光にしろ、出口にしろ、誰かの助けを待っていても決して見つかることはありません。自分を信じ、自分から放たれる光を見出していくのでなければ、いつまでも暗いままなのです。
壁伝いでもいいから、とにかく前へ進み、他の人が何と言おうと自分の感覚に自信を持つこと。うまくいけば、今週は内なる勇気を倍増させていくことができるでしょう。
今週のキーワード
自分から放たれる光を見よ