てんびん座
二つの自然とその融合
文学上の真
今週のてんびん座は、「野の虹と春田の虹と空に合ふ」(水原秋櫻子)という句のごとし。あるいは、他ならぬ自分自身のこころに愛着を抱いていくような星回り。
円を描いて大空にかかる虹をよく見れば、一方の足は野原にあり、他方の足は春の田んぼにあった。そんな虹の姿を、作者は野原からのぼる虹と田んぼからのぼる虹とが天で邂逅したように感じたのでしょう。
そこには「自然の真」を突き詰める客観写生をこえ、人間性の回復を目指して「文学上の真」を追求し、俳壇に新風を吹き込んでいった作者の在り方がそのまま現れているようにも思えます。
すなわち、外界の自然の造形と同様に、それを美しいと思う人間のこころもまた、愛すべき自然であり、両者が溶けあったところにこそ、「文学上の真」は体現されていくのだということです。
10日にてんびん座から数えて「自然回帰」を意味する、12番目のサインであるおとめ座で満月を迎え、同じタイミングで水星が順行に戻っていく今週のあなたもまた、一周、いや何周もまわって初めて到達できる答えにサッと着地していくことができるかも知れません。
人生の土壌
日本人の先祖ははるか3万年ほど前に海をわたってこの列島に住みついたと言われています。そして、その中には舟とともに籾をつんで、稲作をはじめた人もいたのでしょう。それ以来、この日本では稲作を中心に社会は栄え、夏には田植えをして、秋には稲刈りをするという作業を気が遠くなるほどに繰り返してきたのです。
春の田んぼでは、田植えの準備として春におこなう田打ちが行われ、それは連綿と受け継がれてきたサイクルに、いよいよ入っていく際に必ず行うイニシエーションのようなものでもありました。
気の遠くなるほど田を掘り返しても、列島の土壌から豊かさは失われることなく、そこに住む日本人に富と豊かさをもたらし続けてきてくれた訳ですが、それと同様に、あなた個人においても、これまで何度も何度も繰り返し心の豊かさを与えてきてくれたものがどこかにあるはず。
今週は、そんな自分の下で静かに横たわっている人生の土壌について思いを馳せてみるといいでしょう。
今週のキーワード
豊作祈願としての田打ち講