てんびん座
たまには黙って目を瞑ろう
負担を減らすために
今週のてんびん座は、「汗の人ギューッと眼つぶりけり」(京極杞陽)という句のごとし。あるいは、身体の奥底から自分の働き方について問い直していくような星回り。
「汗の人」という大胆な形容に、「ギューッと」という擬態語が重なるどこかマンガ的な句ですが、どうしてそんな風に眼をつぶっているのか。
疲れがはなはだしいのか、見たくないものがあるのか、それとも胸の底から何か深い感慨がこみ上げてきているのか。
いずれにせよ、まるで二度と眼を開けることのないかのようなつぶりようですが、あるいはこれは自分のこれまでの「汗の流し方」に対する真剣な検討が促されている今のてんびん座の人たちの姿そのものを表しているのかもしれません。
すなわち、自分が日ごろどんなことに疲れ、弱り、苦しんでいて、どんな時にねぎらわれ、励まされ、慰められているのか。
下弦の月を自分と正反対のおひつじ座で迎えていく今週は、自分にかかる負担を減らしていくことを念頭に、そんなことを自分に問いかけていくといいでしょう。
「女時」を上手に過ごすべく
誰にだってひとつのことを長くやっていれば、必ずどこかで「スランプ」にぶつかっていくものです。それも何度も。
時にはそれが十数年にも及んで、スランプなのか、そもそも才能がないのか分からなくなることだってあるはず。
能の大成者世阿弥の『風姿花伝』の第七別紙口伝の終わり近くに「男時・女時」という言葉が出てきますが、これなど日本最古のスランプ論のひとつと言えるかもしれません。
「去年盛りあらば、今年は花なかるべき事を知るべし。時の間にも、男時・女時とてあるべし。いかにするとも、能のよき時あれば、必ず悪き事またあるべし(去年大いに運もついて調子がよかったならば、今年はこれといった華のない年になることを覚悟すべきだ。タイミングにも「男時・女時」というものがあって、どんな才能の持ち主であれ、どんな努力をしたとしても、良い出来につながる時もあれば、かえって悪い出来につながってしまう時もあるものだ)」
と言い、とくに女時の対応の仕方が説いています。
女時(めどき)、つまり調子の出ない状況にある時、いたずらにその状況に抗うのではなく、さりとてさっさと逃げ出してしまうのでもなく、じっくりと付き合うことが最良なのではなかろうか。
てんびん座のあなたにとっても、今週はそんなことを大切にしていきたいところ。
今週のキーワード
ハンナ・アーレントの『人間の条件』