てんびん座
夢と天のはざまで
「転身」
今週のてんびん座は、夢判断する心理学者のごとし。あるいは、いつもとは違う頭の使い方をしていく中で、すこし気がふれていくような星回り。
1900年に刊行され、当時まだ真面目な研究の対象とされなかった夢こそ、無意識の世界に至る王道であることを示した画期的著作である『夢判断』において、フロイトは次のように述べています。
「読者はどうぞ私の諸関心を読者自身のものとされて、私と一緒になって私の生活の細々した事の中に分け入って戴きたい。なぜなら、夢の隠れた意味を知ろうとする興味は、断乎としてそういう転身を要求するものだからである。」
ここでわざわざ「転身」という言葉が使われていることに注目されたい。そう、夢というのは少なからず、夢見た者や夢を語る者の現実に侵食し、絡み合い、時に現実そのものをギョッとするような仕方で書き換えてしまうのです。
例えば、夢がふだん目覚めているときの人生に対するひとつの解釈なのだということが分かってくるに従って、目覚めているときの人生もまた夢の解釈なのだということが分かってくるように。
そして今週のあなたもまた、ふだん心の奥底にしまっている記憶や忘却の彼方にある感情など、現実の深い層へとコミットしていくなかで、「転身」を遂げていくことでしょう。
天を仰ぐように
「天は自ら助くる者を助く(Heaven helps those who help themselves.)」
という英語のことわざがありますが、漫画『バカボンド』にも似た言葉として、無謀にもひとりで柳生の城に挑んでいく際に、「(人は笑おうと)天は笑いはしない」というセリフが出てきます。
この場合の「天」とは、「自分の中の何か得体の知れないもの」と言ってしまってもいいでしょうし、その意味で、先の「夢」もこれと同じようなものなのだと言えます。
そして、そういうものを見て行為を成していこうとするのと対極的な態度として、例えば友だちの反応や、世間がどう思うかどうかで決断を成そうとする態度が挙げられるでしょう。
今週のあなたもまた、「自分の中の得体の知れないもの」としての天を仰いだり、見た夢の意味するところへ分け入って「転身」していくなかで、決して曲げない自分だけの判断基準を打ち立てていくといいかもしれません。
今週のキーワード
夢の眼