てんびん座
火鉢の中の埋み火
記憶との再会
今週のてんびん座は、スタジオジブリの『おもひでぽろぽろ』のラストシーンのごとし。あるいは、思い出に取り囲まれつつも、失った現実を生き直していくような星回り。
この映画では、主人公である27歳のOLが夏期休暇を利用して義理の兄の実家の田舎へ農家のお手伝い体験をしに行くのですが、東京から田舎へと向かう寝台列車の中で、不意に小学5年生の頃の自分を思い出したことをきっかけに、何かが変わっていきます。
田舎がないことで寂しい思いをしたこと、少しの間だけ同級生だった「あべくん」の苦い記憶、淡い初恋の記憶、たった一度だけお父さんに殴られたこと。
そんな思い出とともに田舎で過ごしていくうちに、次第に主人公は農家の暮らしに魅かれていく―。
映画の話はここまでにしておきますが、ここで言えることは、人はありのままの現実をリアルタイムに受け止められるほどに強くはないということ、そして人の持つ「忘却」する機能というのは、神さまが施してくれた優しさであるということです。
人は弱いからこそ、何度でも忘れ去っていた過去の思い出を取り戻し、その間に身に着けた知恵や縁を通して、過去を生き直していく。
忘年会シーズンですから、集まって酒を飲み嫌なことを忘れるのも結構ですが、あなたにおいては、日頃の意識の構えをゆるめて、忘れていた記憶を呼び覚ましてみるのも悪くないかもしれません。
焼き芋人生
冬の時期、たまに路肩や公園などで焼き芋を打っているおじさんを見かけると、思わず近寄っていきたくなります。
大人になると、自分で落葉をかき集めてそこに芋を埋めて焼き芋を焼くなんてこともしなくなりますが、あれはあれでいいものです。
待っている間、落葉が火と煙とともに天にのぼってゆく光景を前にしていると、思わず「この世の現実とは何だろうか?」という夢想がかき立てられていく。
言ってみれば、煙と同じように、この世の現実も吹けば飛ぶような夢や幻のようなもの。その意味で、この現実世界とは「おもひで」に他なりません。
慌ただしい日々の中にいるとつい忘れがちなことではありますが、私たちはそうした「おもひで」のもとにくすぶっている焼き芋のようなものなのかもしれませんね。
今週のおとめ座のあなたも、「おもひで」に埋もれ、「おもひで」を天に帰していく中で、人生において自分が何を大切にしていきたいのかを改めて認識していくことができるはず。
今週のキーワード
火はもっとも軽く、精妙で、純粋さと浄化の象徴