てんびん座
歴史との接続
受け継がれていくべきもの
今週のてんびん座は、「「大和」よりヨモツヒラサカスミレサク」(川崎展宏)という句のごとし。あるいは、営営と継がれてきた思いに花が咲いていくような星回り。
「大和」はすなわち戦艦大和。史上最大の戦艦として知られたものの、沖縄方面に出撃し、米軍機動部隊の猛攻撃によって坊ノ岬沖で撃沈されたのが1945年4月7日。掲句では南シナ海に眠るその大和から、電文が届いたという。
こちら黄泉平坂(黄泉の国と娑婆のあいだにある坂)でも菫の花が咲いております。
可憐に咲く菫の花はどこか市井の人の抱く新鮮な感情を思わせるからか、巨大な大和との取り合わせは不思議な感じもしますが、乗り込んでいた水兵の中にこんな繊細な心遣いをする人もいたのかもしれないという想像は、意外と無理がないものです。
それはやはり、あの戦乱の時代に生きていたのも、同じ民族同じ人間なのだという意識があるからでしょうか。
少なくとも平和と繁栄を願う気持ちはいつの時代も変わらず紡がれ続けているもの。今週はそんな歴史の一部に自分自身もまた接続されていくように感じていくはずです。
マオリ族のハカ
自分を歴史に接続するという営みは、しばしば伝統的に受け継がれてきた儀式において実現されてきました。
例えば、ラグビーのニュージーランド代表、通称オールブラックスが試合前に必ず踊る「ハカ」。
これはそもそも、マオリ族の戦士が戦いの前に手を叩き足を踏み鳴らし力を誇示することで自分たちの士気を高め相手を威嚇するための舞踊で、1820年ごろにンガティトア族のテ・ラウパラハ族長が踊ったものが起源と言われているそうです。
おそらく、自分たちよりも強大な敵集団に立ち向かおうとした時に生まれたのでしょう。
攻撃本能というのは本来弱いものいじめではなく、自分や自分の大切なものを守るための本能であり、力を行使する目的が正しければ、そこには必ず祖霊の加護が与えられると信じられたのです。
逆に、人に羨ましがられるとか、お金が儲かるとか、そういった動機付けで戦われた戦いにはけっして祖霊は味方しないでしょう。
その意味で今週は、自分がどんな戦いを戦おうとしているのか、いまいちど祖霊や歴史に問うていくタイミングとなっていきそうです。
今週のキーワード
祖霊は結果よりも動機を重視する