てんびん座
虹を見にいく
「だらう」の連鎖
今週のてんびん座は、「こんなにも虹がきれいだ死後だらう」(矢口晃)という句のごとし。あるいは、いったん死に、位相が変わることで見えてくる景色が異なっていくような星回り。
この句は自然の美しさを感じて心が洗われるとか、そんな手垢のついた感動を言葉にしているのではない。
「死後だらう」とは「嘘だろう?」であり、その信じられず疑わしいという気持ちの起こりは、それ以前の代わり映えのない灰色の景色の連続にあるのではないかということは容易に想像されえる。
つまり、虹でも偶然見えてくるのでなければ、決して何も起こりはしなかったのだ。だからこそ、作者は虹を見にいったし、そこで初めて「死後だらう」は「どうだ変わっただろう?」という問いかけへと変わっていく。
現在から過去へ、過去から現在へ、また現在から未来、そして未来から現在へ。今週は、そんな自身への問いかけと確認にじっくりと時間をかけていくといいでしょう。
幻視と直視は交差する
三角形の定理のピタゴラスであれ、近代科学の祖と見なされるニュートンやガリレオ、ケプラーなどであれ、彼らの歴史的業績の背景にはいつだって目の前の個別的現実をはるかに包みこんでいくような、宇宙大の妄想が広がっていました。
合理的精神の延長線上には、決して新たな数式などは生まれてきません。
むしろ、度を越したとんでもないほどの奇天烈な妄想を広げられた者だけが、コスモスを構想する学問としての数学の系譜をくんで、新たな数式を編み出してきたという訳です。
てんびん座で新月を迎える今週。
あなたもまた彼らほどではないにせよ、ちょっとした偶然や浮かんできた疑問をきっかけに、人類の創造/想像の過程にすこしでも連なることができるかが問われていくでしょう。
今週のキーワード
妄想の限界突破