しし座
無惨さを受け入れる
現在の、そしてかつての難儀
今週のしし座は、「無惨なら枯向日葵に劣らざる」(中原道夫)という句のごとし。あるいは、人生の、そして人間の無惨さにしみじみと思い当たっていくような星回り。
向日葵(ひまわり)の花は豪華で大きく存在感があるだけに、枯れてしまうと凄まじい。そんな向日葵と同種の無惨さを、作者は自分の中に見ているのだ。どんなに一時的な幸せを手に入れようとも、人生はその本質において無惨なもの。
けれど、そのことを人はなかなか受け入れられず、ないものねだりを繰り返してはその度に失望を深めつつ、苦し紛れに駄々をこねてしまう。
ただ、今のあなたならば、そろそろ自分のみじめなあわれさ、どうしようもない人生の残酷さを、そういうものだと割り切って認めていくことができるのではないでしょうか。
かつてホメロスが伝えたオデュッセウスは、旅の途中、度重なる苦難に疲れ果て、絶望状態に陥ってしまった連れの兵士たちに「現在の難儀もいつの日かよき思い出になる」と言って励ましました。
今週のあなたもまたそんなオデュッセウスになったつもりで、「耐え忍べ、わが心よ。おまえは以前これに勝る無惨な仕打ちにも辛抱したではないか」と自分によーく言い聞かせていきましょう。
クレーの日記より
第一次世界大戦が始まった頃、画家パウル・クレーは自身の日記に次のように書きつけていました。
「この世に生きるべく鼓動していたわが心臓は、とどめをさされて息果てんとしていた。私は考えた。<これらの>ことと私とを結ぶものは、ただ想い出に過ぎなくなるのだ。」
「私はこの肉体を捨て去り、いまや透明な結晶体となるのだろうか。」
この「透明な結晶体」という文言は、やがてクレーの中で「冷たいロマン主義」という言葉となり、以後彼の思想の中核をなしていきましたが、これは今のあなたにまさに必要な態度と言えるでしょう。
今週は、これまで自分が見落としてきた自分や人生の影の側面を顧みつつ、改めて表裏一体の実感を深めていくことになるでしょう。
今週のキーワード
冷たいロマン主義