しし座
花と波
終わり方を考える
今週のしし座は、「ひつじ草少し沈んで眠りけり」(桑原立生)という句のごとし。あるいは、自分なりの物事の「終わらせ方」を見通し、“その時”のための訓練をしていくような星回り。
「ひつじ草」とはスイレンの一種のこと。ひつじ(未)の刻(午後二時)頃に真っ白い花を開花させることからその名がつき、花は午前中には開いて夕方にはしぼんでしまいます。掲句では、さっきまで高原の沼にひっそり浮かんで咲いていたひつじ草が、花びらを畳んで眠りの世界に沈み込んでいます。
それは自分がいま乗っかっている運命がどんなものであるかをよく知った上で、「こうであったかも知れない別の可能性」への内なる執着や葛藤を水底へ静かに沈めていこうとしているのかも知れません。
ただし、花と違って人間は、いつこそが物事を終わらせるべき“その時”なのかを、本能的に知ることができません。
いつ死ぬか分からないからこそ、限りあるいのちを大事にするように。今週のあなたはまだ続いている物事を大切にするためにも、少しでも悔いが残らないよう精一杯いまを謳歌することがテーマとなっていくでしょう。
託し方を見出す
トルストイは『人生論』という著書の中で、死後の生ということを一生懸命考えているのですが、そこには次のような一文が出てきます。
「人間は、自分の生が一つの波ではなく、永久運動であることを、永久運動が一つの波の高まりとしてこの生となって発現したに過ぎぬことを、理解したときはじめて、自分の不死を信じるのである。」
普通、死後に残るのはその人の思い出だけですが、トルストイはそうではないと言っているのです。
ひとつひとつの「波」はあくまで大きな海の一部であり、“世代を超えた働きかけ”という視点で生きることができた場合、その人が死んで肉体は滅びたとしても、世界に対して作られた関係によって、より一層その働きが力強くなることもあるのだと言うのです。
死に方や終わり方を考えるということは、自分なりの海流への思いの託し方を考えるということなのかもしれません。
今週のキーワード
終わり方と託し方