しし座
力強い鼓動を感じるとき
圧倒するか、圧倒されるか
今週のしし座は、古い学説を破りその名を不朽のものとした一研究者のよう。あるいは、そんな人生を夢みる一夜のごとし。
王の背後には、必ず王座を支える力があり、それは人間が自力でどうこうするには余りに巨大で、人智を大きく超えている。
今週は、そんな超然たる運命の力を瞑想するかのような、静謐な静けさが心の中に広がっていきそうです。
しし座はよく「王様の星座」などと呼ばれ、エゴの強い強権的な「絶対君主」のイメージを持たれやすいのですが、実際には無邪気で天真爛漫な「神の子ども」と見立てた方がより実像に近いでしょう。
彼らが神の子である由縁は、周囲を圧倒しようとする帝国的野望にあるのではなく、力強く心臓を鼓動させる何ものかに圧倒されんとするセンスオブワンダーにあります。
そうした目に見えない何か誰かの力を借りて、自分の本分を取り戻していく。
そんな時間を過ごせるといいでしょう。
大ナル宇宙と小ナル宇宙の照応
17世紀の医師ウィリアム・ハーヴィは、血液はからだの末端部で消耗されるという古来からの学説を破り、心臓から送り出されまた心臓に戻ってくるという血液循環説によってその名を永遠のものにしました。
野尻抱影によれば、彼には「瞑想」と題された著作があるそうで、(筆者は実物は未見なのですが)その一節を『星三百六十五夜』から股引きさせていただきます。
空の彼方の数知れぬ天球の群を見よ。その驚くべき光度を思え。彼等をそれぞれ惑星の侍者をめぐらす夥しいや畏敬の各君主として思い見よ。かく想像すれば、いかに無数の広大なる天球が、高い高い虚空で絶えず運行しているに相違ないかが解る。
しかも彼等はどれ一つ、道もない茫漠たる空の荒野で、行く手を誤り、ゴールから逸するものもない。どれ一つ、その軌道から飛び出して勝手気ままな旅をするものもない。どれ一つ、あまりにも近づいて彼等の中心に踏み込むものもない。どれ一つ、年々の通路で互いに侵し合うものもない。或いは、互いの勢力をやさしく及ぼし合おうと割り込むものもない。
然り、彼等すべての回転は、全体系の完成にいとも微妙に適合するよう、タイムを保ち、法則に従いつつ、円滑に行われているように思われる、云々
こうした文章を書いた人が、人間の小さな体の中をめぐる細い管の研究に当時誰よりも真摯に取り組んでいたのかと思うと、何か不思議な心地がしてきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウイリアム・ハーベー
今週のキーワード
力強い心臓の鼓動を感じるとき、はかなさと永遠の交錯、「神の子ども」、ウィリアム・ハーヴィと照応の感覚、野尻抱影『星三百六十五夜』