しし座
魂の発生地点
皮膚を危険にさらす
今週のしし座は、「魂をさらすゲーム」に興じるプレイヤーのごとし。あるいは、窒息しかけているわが「身」をなんとか救い出していこうとするような星回り。
商品や提供者がラップや包装に包まれることを強いられ、また、他者とのコミュニケーションや情報の取得もまた間接的なものの割合がずっと大きくなってきている現代において、私たちはいつの間にか「被膜ごし」にしか他者に触れられなくなってしまい、直接<触れる>ことの大切ささえもすっかり見失ってしまっているように感じることがあります。
一方でフランスの哲学者ミシェル・セールは、皮膚という表層の効果として<内部>ということが成立しているのだと述べました。つまり、皮膚と皮膚が接触するところに<魂>が生まれるのであり、唇をかみしめたり、額に手を当てたり、括約筋を締めることでそれは初めて可能になるのだと。さらにセールによれば、他人の皮膚との接触は「魂のパスゲーム」を意味し、皮膚を通して<魂>をさらすゲームの中でこそ、人は自分の存在そのものに触れていくことができるのだとした上で、次のように畳みかけます(『五感―混合体の哲学―』)。
もし君が身を救いたいと思うならば、君の皮膚を危険にさらしなさい
もちろん皮膚を危険にさらせば、必ずどこかで傷を負うことになるでしょう。けれど、そうして負った傷の分だけ、魂としての<わたし>は存在しているのだと言えるのでしょう。
その意味で、9月3日にしし座から数えて「身体性の深まり」を意味する2番目のおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、何かのきっかけで疼きだした傷のなかで、みずからが生きて在ることを確かに感じとっていくことになるはず。
隠された生命力の源泉
田口ランディの短編集『蛇と月と蛙』の一つに、ある女性がたまたま子どもの頃に見た蛇の交尾を思い出して、次のように語るシーンが出てきます。
お正月に神社にお参りに行くでしょう。そうすると“しめ縄”が張ってありますよね。あのしめ縄がね、そっくりなんです。交尾していた蛇の姿に。もう、うり二つ。だから、しめ縄を見ると、どうしても蛇の交尾に見えてしまうんです。学術的なことはわからないけど、しめ縄のルーツは蛇なんじゃないでしょうか。(中略)あの姿はほんとうに異様だった。異様なんだけど、なんていうか、すごく切実な感じで、胸苦しいほどだった。
そして、女性の言葉は著者の考えを代弁するかのように、こう続くのです。
生き物は、淫らでけなげだなあと思いました。でもきっと、神様の目から見たら、人間も同じように淫らでけなげな、生き物のひとつかもしれないですね
民俗学者の吉野裕子によれば、縄文時代の人々は蛇に「生命力の旺盛さ」を見て取り、祖先神にまで崇めていったのだと言いますが、実際に蛇の交尾は種類によって時に20時間以上にも及ぶことがあるのだそう。
今週のしし座もまた、自身の肉体やその奥底に宿っているエネルギーの巨大さに改めて気付き、掘り起こしていくことが一つのテーマとなっていくでしょう。
しし座の今週のキーワード
淫らでけなげだなあ