しし座
力みすぎてはいけない
優しくなければ
今週のしし座は、『どこか隙ある人のごとくや五月富士』(植松とし夫)という句のごとし。あるいは、張り詰めていた緊張感をストンとゆるませていこうとするような星回り。
表富士か裏富士かはともかく、「五月富士」は下には新緑をたずさえながら、七合目から八合目まで残雪の白をいただく絶妙な景色で人の心を捉えますが、確かに冬富士のきびしさと比べると、「どこか」放心しているような感じがします。
ちょうど、日頃は立ち居振る舞いにしろ、ビジネスユーズで着ているものだったりで、ビシッと決めていたり、隙を見せない人が、休日に会ってみると意外と気が抜けた格好をしていたり、そうした横顔を垣間見たりした時のような。
特に、人前で格好をつけて、誰かにしんどい顔を見せたり、弱音など吐くまいと、何かとやせ我慢しがちなしし座の人たちは、どうしてもそうした「冬富士」を目指してしまいがちですが、それなりに経験や年を重ね、後輩や部下との関わりが増えてくるほどに、掲句のような「隙」こそが人間関係の肝となってくることを痛感するのではないでしょうか。
すなわち、周囲の特に目下の人間にいじられたり、ツッコまれたりするのは、その人の弱さでもなけりゃ情けないことでもなく、誰かを抑えつけないでいられるだけの強さの証しであり、五月富士のように美しさをも備えうるのだということ。
その意味で、5月1日にしし座から数えて「パートナーシップ」を意味する7番目のみずがめ座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、もっといじられたり、ツッコまれたりすることを、まず自分自身にゆるしていくべし。
非意識的な連帯
何かが軋む音や、鼻をつく匂い、いつもとは異なる感触、窓の外でゆれる漆黒の葉陰…。
不意にそうした体験が差し込まれた時、記憶の底に埋もれていた感覚や感情まで想い出され、意識がどこかへ連れ去られてしまうといったことがあります。
あれは私自身の記憶、こっちはネットで知った情報、これは知り合いから聞いた体験談。そんな風に普段は頭の中で整理されていた情報が、さながら一挙にかき混ぜられて人称による区別が消え、夏空に突如として巨大な雲がもくもくとそびえ立っていくように。
それは「やった/やられた」といった能動/受動で出来事や物事を語ることで、人と人との微妙な関わりを、誰が悪かったといった単なる悪者探しの道具にしてしまうのとは対極的な、人が独立した個人である以前にゆるやかに結びついたネットワークのなかに、ふたたび自己を開いていくという滑走的な営みに他ならないのかも知れません。
今週のしし座もまた、そうした非意識的な連帯にあなた自身も身を委ねていくことに、すすんで親しんでいくべし。
しし座の今週のキーワード
時には弱音も吐いていい