しし座
遊興的なまなざしを通して
いのち満つ
今週のしし座は、『梅咲いて庭中に青鮫が来ている』(金子兜太)という句のごとし。あるいは、待ちに待ったものの到来と全身で向きあっていこうとするような星回り。
冬のあいだ枯れてさみしかった庭に、梅が咲いてようやく待ちに待った春の気配が漂ってきたと思って戸を開けてみると、そこには青鮫がたくさんやってきていた、というのです。
なんとも幻想的な光景ですが、「青鮫」というのはなにかのメタファーなのでしょうか。例えば、春の陽光であるとか、肌寒い空気とは対照的な水のぬくもりであるとか。ただ、そういう風にとらえてしまうと、途端に単に奇をてらっただけのつまらない句になってしまいます。
したがって、この句に現れた「青鮫」はきわめてリアルなものであるというのが、読みの本筋でしょう。架空だけれども、本物でもあるのです。実際、作者は掲句について、次のようにも述べています。
気が付くと庭は海底のような青い空気に包まれていた。春が来た、命満つ、と思ったとき、海の生き物でいちばん好きな鮫、なかでも精悍な青鮫が、庭のあちこちに泳いでいたのである。(『金子兜太自選自解99句』)
2月10日にしし座から数えて「他者」を意味する7番目のみずがめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、魂そのもののリアルを直につかんでいくべし。
仙境に遊ぶ夢を見る
古代中国や中世日本の老いの図像には、しばしば老いたる者が最も若いというパラドキシカルなリアルが垣間見られますが、掲句を詠んだときの作者もまたそんな仙人的境地に立っていたのではないでしょうか。
そうした境地や伝統は、めまぐるしく移り行く現代においても気功やタントリズム、太極拳や養生訓、俳諧などの各種実践を通していかにエロスを深化し純化させていくかというあくなき道の探究として僅かながら、その命脈はかろうじて保たれているように思います。
実際、脳科学的な見地としても、若返りは心身の調整コントロールによる脳の活性化と大いに相関関係にあるそうで、これは明らかに老いをあくまで「死ぬ向かう身体」と見なす西洋的な思考の枠組みとは異なる東洋的な枠組みに即した人間観であり、例えば子供らと遊ぶ良寛さんなどもそうした東洋的な老いの理想の具現者と言えるでしょう。
その意味で、今週のしし座のあなたもまた、自分の内なるエロスを実感することを通して、また一つ新しい自分を迎えていきたいところです。
しし座の今週のキーワード
「若さに向かって逆成長する身体」