しし座
手足を動かす
無心の迫力
今週のしし座は、『寒の水ごくごく飲んで畑に去る』(飯田龍太)という句のごとし。あるいは、全身の動きを連動させていくための紐帯を求めていこうとするような星回り。
毎年、大寒から立春までの期間は、お酒や味噌の仕込みに最も適した時期とされており、この時期の水のことを「寒の水」と呼びます。これは気温も湿度も低いために雑菌が少なく、一年でもっとも水の質が良くなることが、昔から知られてきたことに由来しています。
作者は甲斐の山間の地に暮らす人ですから、きーんと冷えた谷川の水か何かを重労働のあいまに「ごくごく」と飲んだ。それは思わず声をあげたくなるくらいうまかったのでしょう。それでこの句ができた訳ですが、一方で掲句はどこかごつごつとしていて無造作です。
ひとつひとつの言葉に曖昧なところがなく、その輪郭も澄み切ってはっきりしているし、妙な小細工だったり誤魔化しの入る余地なども一切ありません。それで、なんとなく無心の迫力のようなものが伝わってくる。
おそらく、作者は独自の文学を追求する言葉の人であると同時に、徹底して地に足をつけて生きている行動の人でもあって、それがある種の筋の良さとなって句にも現れているように思われます。寒中の畑仕事がどれくらい重労働なのかは、都会の現代人にははかり知れないところがありますが、少なくとも目と指先だけでなく、全身を酷使していたはず。
その意味で、1月11日にしし座から数えて「健康」を意味する6番目のやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、渇いたら癒す、癒えたら体や手元を動かすくらいのシンプルな行動原理とその徹底を心がけていくべし。
ナウシカの事の始まり
80年代に映画版『風の谷のナウシカ』がその後のエコロジー・ムーブメントの旗手となっていったことはよく知られていますが、ナウシカ世界は最初からある種の思想や哲学として宮崎駿の中で緻密に構想されていたのではなく、それらに先行して、まず森=腐海を描いた一枚の絵として突如現れたことはあまり知られていません。
『ナウシカ』は、コミックの連載をすると言ってしまった後に形になっていったんです。その頃はまだ、荒涼とした砂漠の中にある小国みたいなイメージしかもっていなかったんですが、色々こねくり回したり、いじくり回したりしているうちに突然、森が出てきちゃうんですね。突然です、本当に。初めは砂漠を描いていたのが、砂漠より森のほうが自分で気持ちがピッタリすることがわかったんです(『風の谷のナウシカ―宮崎駿水彩画集』)
実際、漫画版『ナウシカ』の第一巻をめくって最初に目に飛び込んでくるコマには、主人公と同質のタッチで描かれた鬱蒼と茂る腐海の菌類たちが描かれており、そこには緻密な思想の代わりに執拗なまでに描き込まれた錯雑としつつも「温もりのある描線」でした。
今週のしし座もまた、頭で何かを始めるのではなく、手を通して始めることを徹底していくことがテーマとなっていくでしょう。
しし座の今週のキーワード
温もりのある描線