しし座
循環を促していく
こつんと頭にあたる感触
今週のしし座は、『ニュータウンの短き坂よ木の実降る』(宮本佳世乃)という句のごとし。あるいは、あらぬ方角からの作用をこそきちんと受けとめていくような星回り。
どことなく『平成狸合戦ぽんぽこ』の世界線を思わせる一句。落ちているどんぐりをひたすら拾い集めることに無心になれた日々ははるか遠く記憶の彼方。とはいえ、そうした日々の感覚をよみがえらせるためのスイッチというのは、案外ふだんは素通りしているような何気ない日常の中に転がっていたりする。
例えばそれが、高度経済成長期に郊外の里山などを大規模開発することで作られたニュータウンの、整然とした舗装路の一角にある坂。いかにも人工的な感じのする、痕跡不明の「短い坂」にも、かつて植えられた街路樹が数十年の時をへて、木の実を降らせたりする。
それはかつてあった里山の記憶が復活した瞬間であり、また、世俗の内側へと降り注いでくる他なるもの、超越的ではかりしれないものの、人の手では止めることのできない侵犯を目の当たりにした瞬間でもあるはず。
11月5日に自分自身の星座であるしし座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、ほんとうは自分の身ひとつとっても、自分だけではどうすることもできず、人の手を借りるのでも足りず、土地や自然や記憶などに支えられギリギリのところで倒れずに済んでいるのだということを、改めて胸に刻んでいくべし。
森の3つの要素
木の実を降らせるような樹木が鬱蒼と茂っていた「森」には、ある種の循環システムが備わっており、この循環を通して人間を含むあらゆる生命は育まれ、つながって生きてきました。ただ、現実においては現代の都市圏では多くの樹木は切り倒され、土はコンクリートで覆われていて、生命をつないできた循環システムは壊れかかっています。
しかし、一方でこうした「森」のもつ循環プロセスは、例えば①書き手 ②本や記事 ③読み手のような形で、人間世界のなかにも隠れ潜んでいるように思います。
例えば、何かおもしろい内容をかける書き手がいたとしても、それを読んでくれる読み手がいなければ本は存在意義を失いますから、その意味で書き手と読み手は密接な関わりを持っている訳です。さらに、両者をつなぐためには、本や記事の作り手や運営者も不可欠。そしてこの3つをうまく循環させていくためには、3つのいずれかが突出し過ぎないよう、それぞれの要素をよく溶かしていくことが大切です。
逆に言えば、どれか一つが突出しすぎてバランスを崩せば、循環は停滞していき、その流れは濁っていくのです。これは人間関係においても同じで、どんなに仲が良くても、100%合うことなどありませんから、必ず時が経てば濁っていく。それでも、自分と相手のあいだに「木の実=未知なるもの」を受け入れる余地がある限りは、そこで清らかさを保って、新鮮な気持ちに戻っていくことができる。
そういう、定期的に自分を初心に戻らせてくれるものを、今週のしし座は再発見していくことでしょう。
しし座の今週のキーワード
「木の実=未知なるもの」を受け入れる