しし座
かそけき環境こそ主役
この世界は思ったほど狭苦しくはない
今週のしし座は、『河骨(こうほね)の花に添ひ浮くいもりかな』(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、改めて心を広くもつということを学んでいこうとするような星回り。
「河骨」は水のきれいな沼や池や川のほとりなどに自生する水草の一種で、サトイモの葉に似たおおぶりな葉を伸ばし、丸っこい黄色い花を咲かせる。その傍らで、真っ黒な「いもり」が花に添うようにして浮いているのだという。
「いもり」は決して愛らしい姿かたちをしている訳ではありませんし、フグと一緒で毒を持っているため、どちらかと言うと人から嫌われている生きものの1つでしょう。けれど、掲句は明らかにそんな「いもり」を主人公にしている。
いもりは澄んだ水にしか棲めない生きものでもあります。人に疎まれはするけれど、花はその限りでなし。人間の側からすれば、どうしても人間こそがこの世界の好悪の鍵を握っているものだと考えがちになるのも仕方のないことですが、世界はそれだけで成立するほど狭苦しいものではないでしょう。
ほら、現に河骨の黄色い花はいもりの黒に寄り添って、目に鮮やかな美しいコントラストを形成してるじゃないか、と。
同様に、6月18日にしし座から数えて「横のつながり」を意味する11番目のふたご座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、どれだけ大多数の人間に嫌われていようとも、枠を取り去りさえすれば寄り添ってくれる相手がいるのだということに気が付いていけるはず。
半身と戯れる
もちろん多くの人は、いまだにこの世界の主役はあくまで人間であると考えていますし、彼らはそうした華々しい役回りに応じるように声高に自らの考えを懸命に述べ立て、打ち建てた目標にひた走っています。
しかしその一方で、大地や草花、虫や動物など、セリフらしいセリフなど持たない“環境”はつねに控えめで、自己主張する代わりに、ただ作物を実らせ、花咲き、ひそかに周りの環境と交わりながら生きています。
にも関わらず、いやそうだからこそ、人々は遠い彼方の何かを見つめながら、しばしば足元のスミレの花を踏みつぶしていく訳ですが、今のあなたは、むしろそうした足元の花の方にスポットライトを当て、ある意味では彼らこそ主役なのだという「発想の逆転」を試みることがテーマなのだとも言えるかも知れません。
かつてオルテガという人が「私を取り巻くこの現実の領域は、私という人間の他の半身なのだ」と書きましたが、この言葉はまさに今週のしし座の人たちにとって大いに指針となっていくでしょう。
しし座の今週のキーワード
アンビエント・ミュージックのように