しし座
回復の道をゆく
運命に皮肉はつきものであるということ
今週のしし座は、『胡瓜揉み吾をにくむ人面白く』(上田信治)という句のごとし。あるいは、アイロニカルな把握を通して平静を取り戻していくような星回り。
「胡瓜(きゅうり)もみ」は、薄切りにした胡瓜に粗塩をふって、さっと軽く混ぜあわせ、水で流してから水気をしぼるのがコツ。カリウムを豊富に含み、利尿作用のある胡瓜は、体内にこもった熱の排出を促し、夏バテ予防にも効果的なため、昔から夏の食卓の常連とされてきました。
そんなごく日常的なさりげない仕度のシーンのなかで、ふと「吾(われ)を憎む人」を「面白く」感じたというのです。ふつう、人に嫌われたり、悪意を向けられれば悲しくなったり、反発して怒り出したりするものですが、作者はどこかでそういうこともあるのだとそっと受け入れている訳です。
つまり、自分自身も含めた人間存在の弱さや悲しさ、そして運命の皮肉を一歩引いた目線で見つめているのだとも言えます。そして、そういうことというのは、何もしないでボーっとしたり、逆に深く考えを巡らせている時ではなく、かえって忙しく働いていたり、無心で家事をこなしているときに、ふっと起こるものなのでしょう。
同様に、8月5日にしし座から数えて「心の平静」を意味する4番目のさそり座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、無理に気持ちをおさえつけていく代わりに、落ち着くべきところに落ち着いていくべし。
やみ路にやみ路を踏みそえて
現代人は不可解なことが起こると、すぐに「うかがい知れぬ心の闇」などとラベルを貼って、それ以上は考えないようみずから思考停止してしまいますが、今のあなたにはそうした心の闇にまっすぐ目を向けていく気概はあるでしょうか。
人間は日々いろんなことを考えながら生きていますが、その考えの多くは、本当の考えを考えないためのものであって、そういう目くらましの灯りやキラキラをあえて無視し、闇の中を歩ききったとき、なぜだかザワつきささくれたっていた心が不思議と平静になっていたり、治っていたりすることがある。
そして、そのためにはどうしたって“孤独な時間”が必要となります。若いときは、どうしても自分自身の孤独を確立できていませんから、自分の孤独だけが特別だと思い込んだり、他者の孤独を尊重できなかったりしますが、人は孤独の中に溶け込んで、みずから取り入れていくときに精神的な時間を持てたり、直観が働いたりするんです。
そういうある種の回復の道は、いつだって豊かな闇で彩られており、そんな道を行こうとすると、世間からは気が狂っているなどと言われる。でも、それでいいのです。できれば、今週のしし座もまたそんな道をこそ選んでたどっていきたいところ。
しし座の今週のキーワード
自分自身の孤独の確立