しし座
荘厳なるバランス
吊り天井の内部事情
今週のしし座は、「天体が引き止めあへる冬と知る」(藤田哲史)という句のごとし。あるいは、自転しながら公転していくような星回り。
冬という季節は何かと祈ることが多いからか、毎年私たちの頭上にこんなにも星々が輝いていたのかということを改めて気付かせてくれる季節でもありますが、地球から肉眼で見える星はすべて天の川銀河の中にあります。
その天の川銀河という星々の体系は、およそ一千億個の星を含む平板な円盤とそれを包み込む球状のハロー(希薄な星間物質やまばらに球状星団が分布している領域)からなっていて、それが渦巻き状に回転しているのですが、星が銀河系の外へ飛び散っていってバラバラになってしまわないのは、まず星の重力が引き止めているからであり、さらに星の運動そのものが、銀河系が自分の重力でつぶれるのを防いでいるから。掲句の「天体が引き止めあへる」というのも、そうした荘厳なレベルで働く相互作用のことなのでしょう。
例えば、太陽もまた重力がなくなれば水素とヘリウムでできた高温のガスが宇宙へ飛び散ってしまいますし、そうしたガス球の圧力と重力がつりあうように内部構造が調整されていて、それがすなわち星の進化の過程であり、ひとつひとつの星の色や明るさの違いに関係しているのだそうです。
その意味で、2月1日にしし座から数えて「他力」を意味する7番目のみずがめ座で新月を迎えていく今週のあなた自身もまた、そうした天の川銀河系に存在するひとつの星として、いかに自分がさまざまな相互作用の働きのなかで存在しているかということを嫌というほど突きつけられていくことでしょう。
切なさと感情の強度
かつていにしえの時代の旅人にとって、旅とは故郷や知り合いやこれまでの暮らしとの別れであり、もう二度と再会できないかも知れないという"決定的な断絶”さえ意味しました。だからこそ旅立ちは「切ない」ものであり、そこには確かなカタルシスがあった訳です。
ひるがえって、LineやSNSを通じていつでも再会の機会を持ちえる現代社会では、目の前の誰かと「もう二度と会えないかも知れない」といったいじらしい緊張感は極限までゆるんでしまっていますし、それに応じて「感情の強度」もますます薄まってしまっているように思います。
すこしでも重力が弱まれば、星の運動が狂えば、もう二度と同じ夜空は見れないかも知れない。人と人とのかかわりも、本来はそれと同じなのです。だからこそ、過去でも未来でもない、今ここの一点に集中する。そして、伝えるべき思いがあれば、それを言葉にして伝えていく。今まぶたの裏に浮かぶ相手の像が失われてしまう前に。今週のしし座は、そうした切なさの感覚を大切にして、一つひとつの体感を深めていきましょう。
しし座の今週のキーワード
感情の強度をとりもどす