しし座
人間活動
プロセスを完了させていくこと
今週のしし座は、吉福伸逸の<無条件の愛のワーク>のごとし。あるいは、思いきり「馬脚をあらわす」ような星回り。
70年代後半から80年代にかけて、日本にトランスパーソナル心理学を紹介する中心的役割を担い、「伝説のセラピスト」とも呼ばれた吉福伸逸は、既存のセラピーの枠を外した独自のワークを作り上げていきましたが、その中に<無条件の愛のワーク>というものがありました。
これは3人1組となって行われるもので、“無条件の愛”を与える役①と、愛を受け取る役②が向かい合って座り、①は一切言葉を発することなく、相手に“無条件の愛”を伝えるのです。②は、相手の愛が伝わったと心の底から思えたときに①をハグするのですが、そこで③のオブザーバーが①と②が中途半端に妥協していないかたえずチェックするのです。
カウンセラーの向後善之はこのワークについて、
2時間くらいやっているとある瞬間、インター・サブジェクティビティ(間主観性)という、主観が行ったり来たりする感じになってくるんです。これはオブザーバーが大事で、つい妥協しちゃうと、吉福さんが飛んできて“また同じことをするのか”とか、嫌なことをいうわけです」とコメントしていますが、また別の方も「簡単そうに思えるけど、自分の心の底まで探っていくと、考えてもいなかったところにいくわけですよ(稲葉小太郎『仏に逢うては仏を殺せ』)
などとコメントしていました。
12月29日に拡大と発展の星である木星が、しし座から数えて「複雑な感情のしがらみ」を意味する8番目のうお座へと移っていく今週のあなたもまた、なにかにスイッチを入れることで浮上してくる問題やプロセスと改めて向かい合っていくことになるでしょう。
大いに活動すべし
哲学とは、ある問題に対する唯一の解答を見つけることではなく、個において問いそのものを深めていくことにその本質がありますが、哲学者ハンナ・アレントは、それを移ろいやすい「思考」ではなく、「おこない」に着目し重きを置くことで可能にしていきました。
「私たちがおこなっていること」すなわち環境に働きかけていく営みを、彼女は「労働(labor)」「仕事(work)」「活動(action)」の3つに分け、例えば台所でオムレツを作るのは「労働」で、タイプライターで作品を書くのは「仕事」としたのですが、最後の「活動」をめぐる記述を古代ローマの知識人カトーの言葉を引いて終わってみせたのです。
なにもしないときこそ最も活動的であり、独りだけでいるときこそ、最も独りでない
独りでありながらも、心の奥底の深いところで他者とつながっていくこと。それが「活動」の本質なのであり、「多数性」という人間の条件なのだと彼女は言います。
例えば、大きな人生の問いを抱えて、それを共有できる友人と議論したとします。これは生命の営みと直結する「労働」でも、なんらかの成果や人工物を作りだす「仕事」でもありませんが、「ひとりの人間」としての私が、物や事柄を介入させずに、純粋に誰かと深く対話したという点で「活動」なのであり、端的に言ってしまえば、あらゆる哲学も、<無条件の愛のワーク>も、そこで馬脚をあらわしたりするのも、すべて「活動」に他ならないのです。
労働でもなく仕事でもない活動の時間を、生活や人生の中にいかに持ち続けていけるか。年末年始のしし座は、そんなことを念頭において過ごしてみるといいかも知れません。
しし座の今週のキーワード
なにもしないときこそ最も活動的であり、独りだけでいるときこそ、最も独りでない