しし座
生きよ堕ちよ
こちらは8月9日週の占いです。8月16日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
むくむくむくっ
今週のしし座は、「海に青雲(あおぐも)生き死に言わず生きんとのみ」(金子兜太)という句のごとし。あるいは、固くならずにそこにただ在るような星回り。
終戦の翌日に詠まれた句。作者は昭和19年(1944)に世界最大のサンゴ礁のあるトラック島へ、サイパンを経て出征しました。その地で米軍による空爆や機銃掃射により戦友が倒れていくのを目の当たりにしたり、深刻な食糧難で飢え死にしていく者が後を絶たない極限状況を生き延び、終戦を迎えたのです。
その後、米軍に捕虜となって一年三か月後に最後の引き揚げ船で島を離れ、日本に帰ることができたのですが、掲句を詠んだ時点では、多くの日本人と同様、まだ戦争に負けたことの虚脱感や信じていたものを失った喪失感の方が相当に大きかったのではないでしょうか。
それでも、掲句にはとにもかくにも「生きる」ことへのまっすぐな思いが十七音に刻まれています。世界は広大で、人間は、自分はちっぽけな存在に過ぎない。その事実を前にすれば、いかに死ぬべきだの生きるべきだのの理想論は雲散霧消し、ただ震える心を抱いて、洋上にむくむくと昇り立つ「青雲」のように生きていくのみ。
「生命力の純粋な発露」を意味する自分自身の星座であるしし座で8月8月夜に新月が形成されたところから始まる今週のあなたもまた、変に自意識をこねくりまわさず、生き生きとする身体やこころを大切にしていくべし。
無頼ということ
「無頼派」などと言うと、どうしても「ごろつき」や「無法者」のイメージを抱きやすいですが、無頼派作家の代表格とされた坂口安吾などを見ていくと、無頼というのは単にドロップアウトなヤンキーを指しているのではないということが分かります。あくまで、開き直って生き続けるだけの強さを持とうとし続けた人のことを無頼と呼んだのです。
では、何に対しての開き直りを言うのか。それは自身の負い目であり、過去の失敗に他なりません。ただ、ここで勘違いしてほしくないのは、だからといって無頼は失敗の無条件の肯定ではないということ。それは無頼ではなく単なる自分勝手であり、我がままに過ぎない。そうではなくて、何かに夢中になること、夢中でいられることを第一において、それ以外は頓着しないという態度こそ無頼の本質なのではないでしょうか。
つまり例え周囲から非難されようと、中途半端な反省なんて、しない方がよっぽどいい。むしろ失敗を隠さない代わりに、いのちの邪魔もしないでいること。自意識による防御を捨てて、できるだけむき出しのいのちそのものであろうとすること。今週のしし座は、そういう意味での無頼ということをみずから実践してみるといいでしょう。
しし座の今週のキーワード
「生きよ堕ちよ、その正当な手順の外に、真に人間を救い得る便利な近道が有りうるだろうか」(『堕落論』)