しし座
これでよし
転機とシンクロ
今週のしし座は、三十七歳の時の松尾芭蕉のごとし。あるいは、誰に媚びるでもなく、時代に流されるのでもなく、自身の歩むべき道を見出していこうとするような星回り。
俳句の宗匠(マスター)となって賑やかな日本橋界隈に住んでいた芭蕉は、三十七歳の時に突如として、当時は辺鄙な場所であった深川の粗末な小屋に移り住みました。そして、それだけでなく、それまでの売れ線の俳句とは異なる独自の作風を確立し始めたのです。
その頃に詠まれた「枯枝に烏のとまりたるや秋の暮」という句に添えて、歴史小説家の中山義秀は『芭蕉庵桃青』の中で次のように書いています。
彼はその頃からして、体内になにやらうごめく力を感じていた。小我をはなれ眼前の現象を離脱して、永遠の時のうちに不断の生命をみいだそうとする、かつて自覚したことのない活力である。/その活力が「烏(カラス)のとまりたるや」という、字あまりの中十句に、余情となってうち籠められている。
こう書いた中山もまた、早咲きの同級生を横目に、中学校の教師生活や校長とのトラブル、妻の闘病と死、貧困といった生活上の困難を経て、やはり三十七、八歳頃にようやく自身の文学の道を確立したのでした。中山にとって文学の道とは、時代や状況に流されることのない、独立自尊の気風であり、芭蕉を描いた筆致にも、自然と自身のたどってきた道への思いが重ねられていたように思います。
同様に、8月8日に自分自身の星座であるしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自己卑下するのでも過大評価に陥るのでもなく、ありのままに自分自身を捉え直していくことがテーマとなっていくことでしょう。
人は時おり別人になっていく
人生の変節を感じさせるものに、「のど」が挙げられます。これは言われてみないとなかなか分からないことではありますが、たとえば人の声というのもちょっとした条件でトーンや響き方が変わっていってしまうものなのです。
そして、思春期の声変わりの時期のように、時にそれまでの自分とはまるで別人のようになってしまったような変化を遂げる瞬間がある。何かが一時的に乗り移ったのか、本当に別人になったのかはともかく、とにかくそういうことがあるのです。
そう考えると、人は一生のうちに何度別人のように声を変化させていくのか。もちろん個人差もありますが、二人や三人ということは滅多にないはずで、おそらく多い人で十人から二十人弱くらいまでは行くのではないでしょうか。いずれにせよ、微妙な変化になればなるほど、人に言われてみないと自分では気付かない。
誰かに声をかけてみて、初めて違和感と共にそうした変化に気が付くこともあるはずです。その意味で、中山にとっての芭蕉がそうであったように、今週のしし座もまた、何かしら自分の変化を他人を通して知るところも出てくるかも知れません。
しし座の今週のキーワード
鍵となる他者あっての独立自尊