しし座
夜とかがり火
夜の覚醒について
今週のしし座は、リルケの「強力な夜に抗って」という詩のごとし。あるいは、言葉にすることがほとんど不可能であるようなことをあえて口にしてみようとするような星回り。
語りがたいことを語るのが詩人の役目だとして、それはしばしば「創造(クリエーション)」であると誤解されがちです。しかしそれは実際には「翻訳」と言ってしまった方が適切ではないでしょうか。
世界に現に存在し、力をふるっていながらも、依然として符合以外の言葉を受け付けないものを、生きた言葉に置き換えること。ただし、翻訳と言っても忠実かつ正確な逐語訳は不可能であり、また既存のあらゆるテキストによらず、自分の口で語らなければなりません。例えば、詩人たちがしばしば雷のような一撃に打たれる夜についての詩は、こんな具合で語られています。
……この本来の夜の中へ
偽物の粗悪な模造の夜を引っぱり込み、
それで満足しなかった者がいただろうか。
私たちは神々を、発酵したゴミ溜めのまわりに放置している。
なぜなら神々は誘いかけてくれないからだ。
神々は存在するだけで、
存在以外のものではない。
過剰な存在でありながら、香りを放たず、
合図も送らない。
神の口ほど沈黙したものはない。
21日にしし座から数えて「与えられた任務」を意味する10番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、「感ぜよ」「思い出せ!」といったかすかな合図を受け取っていけるかどうかが試されていくでしょう。
火の中をくぐる
ニーチェの『人間的、あまりに人間的』(池尾健一・中島養生訳)の中にある「軽蔑の火の中で」という断章を見ていくと、「自分の不名誉になるような考えを最初に大胆に表明することは、自立への第一歩になる」という一文が出てきます。
もちろんそれをいざ実行してしまえば、生半可な知り合いや常識人たちは怖気づいてしまうでしょうし、あなたの元から離れていくでしょう。けれど、ニーチェはおそらく自分自身の経験をふまえ、実感を込めて次のように続けるのです。
「能力に恵まれた者なら、この火のなかを潜り抜けなければならない。そうすることで彼がいっそう自分らしくなっていく」と。そういう意味では、詩人の翻訳もまたたえず軽蔑の火の中をくぐり続けているのかも知れません。
今週のキーワード
人間的人間