しし座
やさしさに包まれたなら
ビジョンを受け取るとき
今週のしし座は、「五月の夜未来ある身の髪匂う」(鈴木六林男)という句のごとし。あるいは、みずからのこれからを一瞬のうちに思い描いていくような星回り。
「五月の夜」と言われると、心地よい風が吹きわたりつつも、あたりいっぱいに草木の生気に満ちている情景が思い浮かびますが、そこにふと自分の髪の匂いも混じっているのを感じたのでしょう。その時、自身にもまだほとばしるような生命力があること、そしてそれは確かな未来を約束してくれるものであることを直感したのです。当時作者は35歳。
戦地の最前線で過ごした生きるか死ぬかという日々を経て、戦後は社会性俳句の中心を担う作家として注目を受け続けた作者ですが、この句を詠んだ時、もしかしたらどこか鬱屈した思いを抱え、未来への見通しを見失っていたのかも知れません。
そうであるとすれば、髪の匂いはただの体臭などではなく、地に足のついた自身の在り様を指し示してくれる宇宙的符牒であり、明日への希望そのものだったはずです。
少なくとも、そこには賭けに出られるだけの何かがある。
23日にしし座から数えて「コントロールを超えた環境」を意味する11番目のふたご座で、新月を迎えていく今週のあなたもまた、どこかで今後の中長期的なビジョンのようなものを受け取っていくことがテーマとなっていくでしょう。
ビジョンとしてのブッダの第一声
仏典によれば、かつてゴータマ・ブッダは母・摩耶の胎内から出て七歩歩き、蓮の花の中に立って、「天上天下唯我独尊」という第一声を放ったと言われています。
ただこれは「自分より優れたものなどない」という傲慢な思い上がりなどではなく、この世に存在する「我」ほど尊い存在はない(自分だけに限らず)という、尊厳への確信に貫かれた言葉。
そして、蓮の花とはそんな尊厳にみちたブッダを支える玉座、すなわち「背後から支える力」として彼の聖性と分かちがたく結びついており、聖地における磐座(神の宿る自然の依り代)に近い役割を担っているものとも考えられます。
冒頭句でも、作者が五月の闇や風に包まれたように、自分本来の尊厳を取り戻していくには、まず自分にとっての「蓮の花」を見つけていかなくてはならないのです。今週は、そんな普段あまり気にすることのない秘やかなつながりや隠れたネットワークにおのずと焦点があたっていくことになるでしょう。
今週のキーワード
ビジョンは自己尊厳に基づいてこそビジョン