しし座
己を楽にして漂わせる
蝶になりきる
今週のしし座は、「波瀾なき一生(ひとよ)も一生 昏々とたましひ遊べ あめつちの間(かん)」(高野公彦)という歌のごとし。あるいは、自分自身をひとつの歌のように見なして解き放っていくような星回り。
古代ギリシアでは、蝶のことも人間の魂のことも同じ「プシュケー」という語で表わしたが、確かに一切を見通す神のごとき視点からすれば、私たちは一生を野原をひらひらと漂い舞う蝶のようなものなのかも知れない。
それならいっそ迷えるままに、無心になってただ蝶の境地に徹してみるのも悪くない。ドラマや映画のような分かりやすく過激な出来事など起こらずとも、心の迷いのひとつひとつがそのまま遊びになるのだから。
悟りの境地からは程遠くとも、そうした迷いと遊びが裏腹となった「たましひ」の舞いは、そのまま旋律を伴なって口から洩れる呼吸音を歌へと導いていく。 心が舞っているのなら、口からついて出る言葉もまたそのまま歌となり、たましいを振るわせていくことができるし、それに自然と共振するものも現われてくる。
8日にしし座から数えて「身振り手振り」を意味する3番目のてんびん座で、満月が起きていく今週のあなたもまた、自分がいま周囲へ伝えていきたいことが何なのか、その輪郭や内容が日を追うごとに次第に明確になっていくはず。
胎児の呼吸
しし座の人たちというのは、ときどき元気がなくなってくると、かに座的な無意識の同調圧力の中で息ができなくなってしまったり、ある種の仮死状態のようにお籠りしてしまうことがある。そうした際に思い出したいのが、老子の道徳経第十章の次のような言葉だ。
「迷える魂を落ち着かせ、統一を保って、そこから離れないようにできるか。
息をこらし、心を開いて嬰児のようにできるか。
神秘めいた幻想をぬぐい去って、一点のくもりもないようにできるか。」
このような息のコントロールは、どんな状況にあれど事態の克服と豊かさの感受を保証してくれる。でもそれは、さながら生まれたばかりの獅子が羊膜をみずから食い破って、再誕生を図っていく際に必要な心得でもあるように思われる。
今週のキーワード
迷いと遊びを羽根の表裏として