しし座
手から生まれる
ナウシカの事の始まり
今週のしし座は、長編アニメーションの最初の一枚を描くこと。あるいは、思想や意図から独立した作品制作の可能性を追求していこうとするような星回り。
80年代に映画版『ナウシカ』がその後のエコロジー・ムーブメントの旗手となっていったことはよく知られていますが、ナウシカ世界は最初からある種の思想や哲学として宮崎駿の中で緻密に構想されていたのではなく、それらに先行して、まず森=腐海の描いた一枚の絵として突如現れたことはあまり知られていません。
「『ナウシカ』は、コミックの連載をすると言ってしまった後に形になっていったんです。その頃はまだ、荒涼とした砂漠の中にある小国みたいなイメージしかもっていなかったんですが、色々こねくり回したり、いじくり回したりしているうちに突然、森が出てきちゃうんですね。突然です、本当に。初めは砂漠を描いていたのが、砂漠より森のほうが自分で気持ちがピッタリすることがわかったんです」
『風の谷のナウシカ―宮崎駿水彩画集』
実際、漫画版『ナウシカ』の第1巻をめくって最初に目に飛び込んでくるコマには、主人公と同質のタッチで描かれた鬱蒼と茂る腐海の菌類たちが描かれており、それは緻密な思想の代わりに執拗なまでに描き込まれた錯雑としつつも「温もりのある描線」でした。
立春を経て、10日(月)には自分の星座であるしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、頭で何かを始めるのではなく、手と眼を通して始めることを徹底していくことがテーマとなっていくでしょう。
脱・人間的発想
腐海の森は菌類の王国ですが、それはどこか粘菌の生態をも連想させます。
例えば、長年にわたって粘菌を研究している北海道大学の中垣俊之氏は、粘菌の生態から人間を振り返って、「私たちはあまりにも物事を中央司令的にコントロールしようとし過ぎている」という問題を指摘しています。
確かに私たちは、つねに主体的に「何かをしなくちゃいけない」という強迫観念を抱きがちであり、これは「依存した方が弱くて、依存された方が強くて、偉い」という中央司令的な発想に固執してしまうところがあるように思います。
一方で、粘菌は一度くっついたものはどこを切っても同じ粘菌であり、その中でどこが偉いだとか、誰が弱くてダメかなんて発想は一切持ちません。そして、そうした非人間的発想によって、どんな苛酷な環境でも生き延びてきたのが粘菌なのです。
今週のしし座は、そうした粘菌の在り方からも大いにヒントを得ていくことができるかも知れません。
今週のキーワード
頭はときに頭が悪い