しし座
破れ時
月並な表現を破る
今週のしし座は、「寒を盈(み)つ月金剛のみどりかな」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、これまでとは別の次元に自分の存在をずらしていくような星回り。
「月金剛のみどり」とは、非常に矛盾を含んだ言い回しであり、なかなか容易には想像できない光景です。なにしろ、緑色の月など現実にはありませんから。けれど、作者の眼前にはそうとしか言いようのないお月様が浮かび、その光があまねく天を満たしていた。
そういう自身のちっぽけさの感覚と、それでも何か言い表さずにはいられない内的衝動ののはざまで引き裂かれていくのでなければ、掲句を真に理解することは難しいでしょう。
それほどに強さと透明さ、「みどり」という色のもつ豊かさと柔らかさを共に備えた円やかな月の姿は、一般的な「寒月」のもつ“冷たく厳しいもの”という現実的イメージからはかけ離れたものであり、作者はそれ相応の覚悟をもって掲句を詠んだのではないでしょうか。
そしてその際必要となってくるのは、伝統や権威への迎合や世の潮流への同調ではなく、自己の感覚に対する揺るぎない信頼。この一点に尽きます。
13日(月)から14日(火)にかけて、しし座から数えて「自分なりの流儀」を意味する6番目のやぎ座で太陽と土星と冥王星が正確に邂逅していく今週のあなたもまた、自分が授かった直観を実際の仕事の流儀として貫いていくことで、自身をまた一つ鍛え上げていくことになりそうです。
餅は膨れて餅となる
これは言い換えれば、「ついにこれまで越えなかった一線を越えていく」ということでもありますが、あえて日常的な光景から考えてみたいと思います。
例えば、正月などに網に餅をいくつか並べて焼いていると、餅が決して同じようにはふくれないことが改めてよく分かってきます。横へずれるのもあれば、真上にきれいに膨れ上がっていくものもあり、また中にはついにまったくの不発の終わるものもある。
まるでどこかの誰かのようですが、さて、では今のあなたはそのうちのどれに当たるのでしょうか?
それを見極めるには、まずある程度じっと我慢して経過を待つ必要があります。
逆に言えば、途中で怖くなってしまって餅をひっくり返したり、面倒になってさっさと皿に移してしまっては、見極められるものも見極められない。このことを、今週のあなたはよく肝に銘じておく必要があります。
「自分は自分、人は人」と割り切って生きていくためには、そうした怖さや面倒さをどこかで引き受けていかねばなりません。今週は、一度越えてしまえば後戻りできない一線を悠然と越えていくぐらいの気概が欲しいところです。
今週のキーワード
肝に銘じる