しし座
魂の慰安ということ
挽歌と相聞の重なり
今週のしし座の星回りは、「恋」を表記するのに「孤悲(こひ)」という仮名を宛てた万葉びとのごとし。すなわち、鎮魂をみずから表現していくということ。
先進国では唯一、若年層の死因の第一位が自死となってしまっている日本では、生を最後までまっとうすることなくこの世を去っていく若者たちに関するニュースに触れることはもはや珍しくありませんが、実は万葉集を眺めていても、異常死者に対する哀悼を歌った「挽歌(ばんか)」が非常に多いことに気が付きます。
そこで異常死の問題が時代を超え、地域を超えて我が国で発生し続けてきたということを思い知らされる一方で、現代では異常死に対する不安と恐れの感覚が乾ききったまま散り散りに断片化しています。
そのことは、万葉集が作られたはるか古代のように儀礼として挽歌を制作し、彼らを鎮魂せんとする情熱が明らかに後退してしまっているようにも思います。
ひるがえって、今のあなたには、そうした悲傷の心情や喪失感を抱きうる対象はあるでしょうか。あるいは、あなた自身がそうした対象となってしまう可能性はあるでしょうか。
26日(木)にしし座から数えて「魔を祓うこと」を意味する6番目のやぎ座で日食新月を迎えていく今週は、散り散りに乱れがちな魂を、みずから紡いだ言葉をとおしてそっと手元に引き寄せていくことが大切なテーマとなっていきそうです。
もっと悲しくなろうよ
挽歌が相聞であり、相聞が挽歌であったという万葉人の感覚には、もしかしたら物に憑かれたかのような、どうにかなってしまいそうな自分自身に対する困惑や不安が前提にあったのかも知れません。
詩人の萩原朔太郎は、こうした深い喪失感と地続きとなっている詩や歌における抒情について次のように述べています。
「真の純真の芸術は、自己の魂の慰安のために、ひとり孤独の部屋に閉ぢこもって、静かに己が心の影を凝視しつつ、ひとり涙を流して低く歌ふべきものである。」
他ならぬ自分自身の魂を、透明感のある哀感、それでいて激しい情熱に染め上げるために。
今週のあなたもまた、まずは自分の抱えている不安や困惑を認め、それらをすみずみまで浸透させていくところから始めていきたいところです。
今週のキーワード
アートの根源としての鎮魂と慰安