しし座
土地に潜る
才能から素朴へ
今週のしし座の星回りは、定住場所の地層を掘り下げていくよう。あるいは、漂泊できないというきしみを利用して、自分の思想を一から築いていこうとするような星回り。
どんなジャンルであっても、一瞬の輝きを放った後に表舞台から消えてしまう“才能ある新人”という存在は、いつの時代も後を絶ちません。
それは他の誰もやったことのないような、ユニークな試みというのが、ギリギリまで追い詰められた個人から発されたケースであり、これはある意味で、いまのしし座が目指している方向性とは真逆のものと言えるでしょう。
例えば、自分に合った土地とつながり、その土地の力を直接を受けて原動力にできた人というのはやはり理屈を超えた強さがありますし、小手先の方法論に頼る他ない人間と比べて、活動の息も太く長いものになっていくように思います。
「他にはない華がある」「才能がある」「光っている」など、そうした使われる誉め言葉に自分を重ねていこうとするのはもうやめましょう。
12日(木)にしし座から数えて「長期的展望」を意味する11番目のふたご座で満月を迎えていく今週は、たとえどんなに不器用で素朴なものであっても、泥臭く自分の日常を掘り下げていくことの大切さが、身に沁みてわかっていくタイミングなのではないかと思います。
定住と漂泊の両立
例えば、明治・大正の大文豪である森鴎外にしても、軍医の仕事をきちんとやりながら、自分の文学というのを作っていった訳ですが、“漂泊心”の強い人ほど定住というか、どこか土地を定めて生きることで、生みだしていけるものがあるのではないかと思います。
何度も同じ場所でつまづき、繰り返し同じ道を歩き、道に生える木にしろ岩にしろ、嫌というほど顔をつきあわせていく中で、そこに自分なりの思いを刻みつけたり、かすかな変化を通じて何かを受け取ったりしていく。
土地に力を受けるとは、そんな「自分個人よりも大きな自分の代名詞を得る」ということでもあり、現代社会で、自分独自のものを作っていくには避けて通れない道とも言えるかも知れません。
金子兜太はそれを「定住して漂泊心を温めながら屹立していく」という言い方で書いていましたが、今週のあなたはそういうことをいかに自分事として考えていけるかが問われていくでしょう。
今週のキーワード
神は休むべくして土地に鎮まり、その土地に住まう者にその力を分け与える