しし座
無心の訓練
峠を越えていくために
今週のしし座は、「冬の峠夕闇のほか登り来ず」(衣笠葉)という句のごとし。すなわち、自分の呼吸音だけがする世界に没頭していくような星回り。
ああ自分ひとり、ほかに誰もいないんだな、ということが身に沁みてきたのでしょう。ただこの句のよさは、そう思ったであろう作者の気配さえ、読者に感じさせないところにあるように思います。
主体は「峠」の方に置かれており、目の前を往来していく人々の姿や、その四季折々の変化の様子をずっと見てきた記憶が不意に入り込んでくるかのようでもあります。
こうした作品の厚みというのは、一朝一夕ではなかなか作り出せません。長年の積み重ねがあって、繰り返される日常を無心で通り過ぎていく期間があって初めて作れる一句と言えるのではないでしょうか。
12月3日(火)に「拡大と発展」の木星が約1年ぶりに星座を移り、しし座から数えて「習慣と儀式化」を意味する6番目のやぎ座へ入っていく今週のあなたもまた、自分の存在さえ忘れるほど没頭できるだけの道を歩いていくといいでしょう。
自然な呼吸で
最果タヒはイラスト詩集『空が分裂する』のあとがきで、自身が詩を「なんとなく、書き続けてきた」経緯について、次のように振り返っています。
「創作行為を「自己顕示欲の発露する先」だという人もいるけれど、そうした溢れ出すエネルギーを積極的にぶつける場所というよりは、風船みたいに膨らんだ「自我」に、小さな穴が偶然開いて、そこから自然と空気が漏れだすような、そんな消極的で、自然な、本能的な行為だったと思う。誰かに見られること、褒められること、けなされること、それらはまったく二の次で、ただ「作る」ということが、当たり前に発生していた。」
「自然と空気が漏れだすような」というところなどは、まさに今週のしし座にとって理想的な在り方と言えるかも知れません。
みんなとどうしても違ってしまう自分の存在を、平凡な装いで隠すのでも、過剰な賞賛で塗りたくるのでもない。
ただ、そういうものとして受け止め、息をするように自然に打ち出していく。今はそんな“ちょうどいい落としどころ”を模索していく時です。
今週のキーワード
自然と空気が漏れだすような