しし座
刀鍛冶の仕事
静かなる炎
今週のしし座は、「炉をひらく火の冷え冷えと燃えにけり」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、何か深い、はるか遠いものを内在させていくような星回り。
火が、冷え冷えと燃えているのだそうだ。確かに、言われてみると、そうかも知れない。
作者は甲斐山中に住まい、その棲み処を“山蘆(さんろ)”と呼んで、白雲去来する中にあって句作に励んだ人。まずしき田夫野人として生きつつ、その半身を文芸に委ねることで、俳句文芸に可能な限りのものを突き詰めようとし、実際に息子でありやはり第一線の俳人でもある飯田龍太と親子二代で追求していきました。
刷新か、存続か。何を変え、何を残していくべきか――。 俳句文芸に限らず、こうした判断は、社会の内側にはまりきっている限りなかなかできることではありませんが、かといって完全に社会の外に出すぎてしまっても難しい。
あるようでなく、ないようである。そういう存在であるからこそ、ようやく可能になってくるのではないでしょうか。
そして今週のしし座のあなたもまた、作者のようにアクの強い人間味がどこかろ過されたような静かな炎を湛えつつ、一心に何かを追求していくことになっていきそうです。
思いを研ぎすます
「冷え冷えと燃えている」というイメージは、どこか刀鍛冶が刀を鍛え直している光景にも通じています。そしてそれは経年により劣化し、刃こぼれが出てきた刀身を焼き直し、研ぎなおすことで、刀が生まれ変わっていく瞬間でもあります。
火の中でオレンジ色になるまで高熱となり、少うし極端なほどの情熱を宿したかと思えば、パキーンパキーンと何度も槌で叩かれてはそれを自ら打ち消していく。躁とうつ。舞い上がる天と地の底深く。繰り返されるその振れ幅の大きさが、結晶の微細化を促し、結果的に刀の強度を信じられないくらい高めていく。
今週のしし座はそ、エキサイティングな熱狂の極みと、怜悧冷徹な戒めの極みとの間で揺れていくようなふり幅が出てくるでしょう。
「どっちやねん!」と問うなら、どっちもなんです。うまくいけば、それはやがて両者を含んだひとつの生命リズムとして確立されていき、一頭の馬となって駆けだしていく。
そんな躍動を予感させる停滞、順行に戻る前の一瞬の留を思わせる今週です。
今週のキーワード
振れ幅こそが強度を高めてくれる