しし座
急がば回れ
ただし、珈琲を淹れてから
今週のしし座は、ゆっくりと立ち昇ってくる珈琲の湯気のごとし。すなわち、自分の中に凝り固まった不安や恐れを、昇華していくような星回り。
自分を大切に思い込みすぎる気持ちは、時にその人をひどく重苦しく、つまらないものにしてしまいますが、28日(月)にしし座から数えて「原点」を意味する4番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたは、自分は最高に大切な存在で、同時にちっぽけなただの人間でもあるという、軽やかで、柔軟な自己認識に改めて立ち返っていくことが重要なテーマとなっていきそうです。
それには否定と肯定を同時に、あるいは順番に行っていくこと。
多大なる自己の前には、当然他者など存在しないため、何かを他者に与えることは自己が得ることであり、それゆえ得ることは与えることに因るのです。それが循環という理(ことわり)であり、それこそしし座が立ち返るべき根本原則でもあるのではないでしょうか。
そんなことを、朝なんとなく思い浮かべながら、滋味豊かな香りとともに、ふんわりと立ち昇ってくる珈琲(肯否)の湯気を感じていけたなら、きっとしし座本来のどっしりとした暖炉の落ち着きと子供のような無邪気の軽やかさとの両立がそっと促されていくはず。
「あ、そうだったのか」
「ぼくたちはすこしも自分のもとにはいないで、つねに自分の向こう側に存在する。不安や欲望や希望がぼくたちを未来の方へと押しやり、ぼくたちから、現に(今この瞬間に)存在していることについての感覚や考慮を奪い去る」(モンテーニュ『エセー』)
モンテーニュが指摘するこうした傾向は、現代においてより強まっていますが、ここには奇妙な逆説があるように思います。
つまり、未来時のある到達点に至りたいなら、本来足もとの大地を一歩一歩踏みしめていかなければそれはありえないのに、私たちは道を歩まず、道を知らずに、どこでもドアでいきなり目的地へたどり着くことを期待している。それは来たるべき未来どころか、むしろ反未来主義と言えます。
珈琲の湯気もそうであるように、間近にありすぎるもの(「今ここ」)は、かえって朦朧としてリアリティーを感じないものですが、しかし着実に来たるべき未来(目的地)へ至る道はそこにしかありません。
その意味で、「ゆっくり行く者が、遠くへ行く」というイタリアのことわざは、今週のしし座にとってよき指針となっていくでしょう。
今週のキーワード
スローライフゲーム