しし座
移ろうほどに深まりゆく
巷間をゆく
今週のしし座は、「門を出れば我も行人秋のくれ」(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、自分の身を時の流れに任せて、大胆に足を踏み出していくような星回り。
秋というのは、古来からモノも人も、物理的にも精神的にも大いに動かされていく季節でしたが、掲句の「行人(行き交う人)」というのも、客観的な描写であると同時に、心配したり思い悩んだりする人のこころのメタファーにもなっています。
この句は芭蕉の「この道や行人なしに秋の暮れ」をひっくり返した句で、芭蕉が秋という季節において孤独な作業のなかで禅的な境地を深めていったのに対して、蕪村は自分をもっと世間や人々のなかに置こうとしているように思います。
その意味で掲句は、自分の家を出ればどんな人でも行人なんだということでもありますし、何を悩もうが悩むまいが時は流れる。何か思い悩むことがあっても、自分で解決しようと躍起になるより、時に委ねてしまった方が、かえって道はすっと開けるということでもあるのかもしれません。
14日(月)早朝に向かえるおひつじ座の満月に向かって、徐々に月が膨らんでいく今週のあなたもまた、いろいろな心の動きが生き物のように動き出していくはず。
それに飲まれるのではなく、どこかそういうものを突き抜けた状態に入っていくことが今週のテーマとなっていくでしょう。
忘れてこそ深まる
未知なるものを求めて、既知のものを捨て去ること。あるいは何かを捨てて初めて自覚される、根源的なアイデンティティー。そういったものが今週のしし座のあなたにとって、大切なテーマとなっていくでしょう。
岡崎京子の物語集に『ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね』というタイトルの本がありましたが、「忘れる」という営みは、特定の現実に対する認識を肯定も否定もしないまま、いったん寝かせて熟成させていくことでもあります(もちろんそのまま放置されっぱなしとなる可能性もあるけれど)。
だから、何か誰かを忘れることは、その何か誰かへの認識を深めることでもあるのではないでしょうか。 そうやって初めて、人は移ろいゆく人生をなんとか受け入れていくことができるのかもしれません。
今週のキーワード
任運