しし座
虚ろと十字架
主役から監督へ
今週のしし座は、「蟻の列吸わるるやうに穴の中」(柿本麗子)という句のごとし。あるいは、いったん虚ろになって、周囲を吸い込んでいくような星回り。
蟻の行列を見かけたとき、私たちはふつう、アリが穴へと入っていくのだと思い込みますが、掲句はそれとは逆に、穴のほうが蟻を吸い込んでいるのだと言うのです。結果的に、穴というものが、なにか得体の知れない生きもののように見えてくるから不思議です。
しし座の守護星である太陽を含んだ月、木星、海王星で十字架を形成していく今週は、しし座にとってどこかそんな掲句のような発想の逆転や、いつもとは異なる在り方へと自然と裏返っていきやすいでしょう。
例えば、しし座というのはどうしても「自分が目立つこと」や「存在感を発揮していくこと」を起点として活動を展開させていこうとするところがあります。
ですが、今週はむしろ映画監督のように、自分自身の存在は作品世界からは極力消し去って、いかに自分の世界観通りの作品を作り込んでいけるか、というやり方へと切り替えていくことを、どうか1つ真剣に考えてみてはいかがでしょうか。
十字架刑による転換劇
そうそう、ゴルゴダの丘のイエスを筆頭に、なぜ古代世界において十字架刑こそが究極の刑罰とされたのかと言えば、恐らくそれが大地と触れ合って生きるという人間の自然な在り方との「断絶」を意味する異常で無力な状態だったから。
つまりそれが、人間を最も深い恐怖に陥れうるやり方だったのでしょう。
これまでのあなたは、無意識のうちに自分の両の足をしっかり下ろし踏みしめることで力を得ていた大地(生の基盤)があったのではないでしょうか?
あるいは、あなたに生きるための糧や安心感を与えてくれるガイアや、やりがいを得られたモンスターや敵役のごとき存在が周囲にいてくれたのでは?
イエスはそうした存在の一切を剥奪され、一度は死の闇に落ちていくことで、後に今までに感じたことのなかったような神性を宿して復活していったのでした。
自信と生命力を全身にみなぎらせることだけが、影響力を高める唯一の方法ではない。今週はそうした意味での「別のやり方」を模索してみるにはちょうどいいタイミングと言えるでしょう。
今週のキーワード
虚空蔵菩薩