しし座
運命感覚を深める
運命に対する態度が問われる時
今週のしし座は、「最高の悲劇的対立」としてのソフォクレスの『アンティゴネー』のごとし。あるいは、運命に直面する「畏れ」をしかと受け取っていくような星回り。
古代ギリシャのテーバイという都市国家の王女であったアンティゴネーには、父王オイディプスが自ら目を潰し王位を退いた後、王位を巡って戦いを始めた末に政敵と刺し違えて死んだ兄がいました。
彼らに代わってテーバイの統治者になった叔父のクレオンは、兄の埋葬や一切の葬礼を反逆者ゆえに禁じる旨をアンティゴネーに伝えたのですが、彼女はその命に背いて兄を埋葬し、国家の掟に反して神々の掟に従った後にみずから命を絶ってしまいます。
事態はここで留まらず、彼女の婚約者であったクレオンの息子ハイモンも剣に伏して自殺し、さらに息子の死に絶望した妻まで自殺して、クレオンは自らの運命を嘆くのですが、例えば哲学者ヘーゲルなどはこれを「最高の悲劇的対立」と呼んでいます。
おそらく今日の私たちが「運命」という言葉を使う時に宿るニュアンスは、こうしたギリシャ悲劇において高度に結晶化しているように思いますが、まさにみずがめ座で新月を迎える今週、しし座のあなたにとって必要になってくるのがこの「運命」というものへの深い理解や感受なのだと言えます。
あなたは「運命」をただ屈従すべきものと考えていますか、それとも何か別のものとして捉えることができているでしょうか。
今週はある種の運命感覚のようなものが、問われていくことになりそうです。
ヘーゲルの運命論
先のヘーゲルは、青年期の『キリスト教の精神とその運命』という論考の中で、運命について、何らかの罰を受けて自らの生きがいとなっていたものが破壊されるとき、彼のなかで運命の働きが始まるのだと述べています。
そのとき、不在のものが自分の分身に他ならないことが自覚され、意識の中で、自分に与えられていたはずのものの「欠如」が「不在の生命」へと変わっていくのだ、と。
そうして
「人間は運命のなかに自分自身の生命を認める。そして生命への希求は主人に対する哀願ではなく、自分自身への立ち返りであり接近なのである」
と続け、さらに
「人間は運命のなかに自己が失ったものを感じるので、運命は失われたものを呼び起こす」
と結ぶのです。
ここでは、運命というものが従わなければならないものとしてではなく、むしろその逆で、それに直面していく者の生命力を強めてくれるものとして運命を考察しているのだということが分かります。
願わくば、今週のあなたには後者の態度をみずから選んでいってほしい。そのように思います。
今週のキーワード
自分自身の生命、自分自身の太陽