しし座
時刻から時間へ
時刻から時間へ
今週のしし座の星回りは、さながら壊れかかった大きな古時計のねじを巻きなおしていくよう。あるいは、移ろいゆく季節を、改めて自分のペースに引きつけて転回させていくこと。
時間というのは人間がこしらえた最も重大な共同幻想のひとつですが、時間が時間であるうちはまだよかったように思います。
時計が発明され、やがて誰もが持ち運び可能なほどにパーソナライズされていった結果、家庭生活も遊びも、恋愛や睡眠までもが時計に縛られるようになってしまった。
手帳やカレンダーのスケジュールは分刻みであるほど、社会的に重要な人物の証しとなり、逆に予定に空白があると不安だという人が増えている。
もはや社会全体が、どれだけ時計に縛られ、逃れられない存在であるかを競っているようでもあります。
ただ、しし座的な感性からすれば、そもそも「Time is Money」というのは性に合わないはずで、「Time is Life」と言った方が腑に落ちるものがあるのではないでしょうか。
そしてこの場合の「Time」とは、時計によって刻まれ人を縛り付ける時刻などではなく、もっと自分をいきいきと自由にしてくれるエネルギーのようなものであったはず。
今週はそんな言いしれぬ感覚を思い出していくことができるでしょう。
ふすまを開ける
『失われた時を求めて』の紅茶とマドレーヌの挿話に象徴されるように、味わいや匂いというのは、しばしば記憶の奥深くに刻み込まれた“時間”を引き出していきます。
現代の人間において“記憶”というものは、あまり思い出したくない過去の苦しみだったり、忘れがたい恍惚の瞬間だったりが、まぜこぜとなって押入れに詰め込まれてしまっている傾向にあるように思います。
そうしてぎゅうぎゅうに押入れが詰まっていると、新たな記憶が入っていかなくなりますから、何を食べても舌が美味しさを感じなくなくなったり、世界から匂いが消えてしまったりするわけです。
あるいは、どうしたら時間をつぶせるか途方に暮れているような場合、人は今にも雪崩を起こしそうな押入れに、生活圏だけでなく心の余裕そのものををつぶされてしまっているのかもしれません。
そういう意味で、今週は記憶が乱雑につっこんである押入れの整理に手を出してみるのもいいでしょう。
今週のキーワード
プルースト効果