しし座
環境と私と世界観
ちっぽけな自分を圧倒するもの
今週のしし座は、「東京に破顔の千年樫ありき」(夏石番矢)という句のごとし。あるいは、自然の眼を借りて、ちっぽけな人間のスケールを超えていこうとするような星回り。
簡単に解釈するならば、東京のような大都市にも、古代の風を感じさせるようなカシの巨木があるじゃないか。思わず笑ってしまう、といった意味でしょうか。
掲句は『巨石巨木学』という、一見するとムー的なオカルト考察書のようなタイトルの句集に収められているのですが、なるほど巨木や巨石というのは、現代社会が拠り所としている近代科学が栄える以前の、文化文明を象徴する信仰の対象です。
それが近代の科学技術の象徴であるかのような東京のコンクリートジャングルの中にもきちんと存在しているのは矛盾に他なりません。作者はそれを、「破顔」という言葉でつないで何とか表現しているのでしょう。
巨木も巨岩も人間の手では決して作り得ず、従ってその一つ一つがはかりしれない時間スケールを秘めた自然の呪物であり、常識や今日的なあたりまえの破壊者です。
そんな巨木や巨岩に触れていくかのつもりで、今週は小さく狭いものになりがちだった思考の枠を、思いきり取っ払っていくといいでしょう。
環境はいつも周囲に立っている
「私とは、私と私の環境である。したがって私がもし私の環境を救わなければ、私自身は救われないことになる」
と、スペインの思想家オルテガは『ドンキホーテをめぐる省察』の中で述べましたが、今週のしし座ならばその言葉の意味がいつも以上に実感できるのではないでしょうか。
「circumistance」とは「周りに立つ」という動詞の名詞形です。寡黙に、しかし顧みられることを熱望しながら、環境は私たちの周りに立ち続けている。オルテガは先の言葉にさらにこう続けます。
「人間は、自分を取り囲む環境について十分な認識を得たとき、その能力の最大限を発揮する」
あなたは、最大限に自分の真価を発揮できるだけの自然や環境を周囲に配置しているでしょうか?
そこをどう設定していくかが今週のテーマなのだといえるかもしれません。
今週のキーワード
世界観の再構築