ふたご座
自らの影をこそ呑みこむ
象徴としてのカエル
今週のふたご座は、「蟇の腹王を呑んだる力かな」(幸田露伴)という句のごとし。すなわち、ふてぶてしいほどの態度で、自身が置かれた状況そのものを呑み込んでいくような星回り。
掲句は、蟇(ひき)の玉のようなお腹に驚嘆しての一句なのでしょう。飲み込んでいるのが太陽であれ、月であれ、まさに「王を呑んだる」その姿は昔からグリム童話やシェークスピアの史劇などで重要な役割を担ってきました。
そもそも、カエルは水中でも、地上でも生きることができる生き物です。
ユング心理学では、水は無意識をあらわすとされ、その意味でカエルは無意識と意識をつなぐもの、あるいは日常と非日常をつなぐ媒介者の象徴と言えます。また、おたまじゃくしから変態をすることから、変身の象徴、再生とよみがえりの象徴でもあります。
今週のあなたは、まさにそんなカエルを自分のどこかに宿すようにして、大胆な変身や、生活や態度の変容を引き起こしていくことになるかもしれません。
自己変容としての地獄下り
ルーマニアの宗教学者・エリアーデは、ある日の日記にこう書いています。
「私は繰り返される失敗、苦難、憂鬱、絶望が、ことばの具体的で直接的な意味での<地獄下り>を表していることを明晰な意志の努力によって理解し、それらを乗り越えうる者でありたい、と念じている」
この彼の言葉は、そのまま彼の生き様であるがゆえに、非常に重い言葉です。
こうした重さは、高慢になったり、脅えたり、逃げたりしている自分の姿=影を受け入れた人にだけ宿るものなのでしょう。彼はいわば、カエルのようにみずからの影を呑み込んだのです。
本当の意味で変身・再生していくということは、さながら暗い穴に降りていくような仕方でこそ可能になるものなのかもしれないですね。
今週のキーワード
『エリアーデ日記 上―旅と思索と人』