ふたご座
私しないで、振り返る
後になって浮かんでくる
今週のふたご座は、『夏わらびここに眠りて日暮まで』(田中裕明)という句のごとし。あるいは、得体の知れない何かとうっかり鉢合わせしていくような星回り。
さっと読み飛ばそうとしても、後で気になって戻って来てしまうような、なんだか変な感じのする一句。
「夏わらび」と言うからには、舞台となっているのは平地ではなく山あいの、きっとほとんど人気のない場所なのでしょう。ただ、その「夏わらび」と「ここ」の関係性がいまいち分からない。
眠っていたのは「夏わらび」なのか、それとも得体の知れない何かなのか。あるいは、蕨のたけった夏山に入りこんだ作者が、うっかり眠ってしまったということなのか。作者を主体として読むのがいちばん穏当という気はするけれど、人間のいない世界でひっそりと、しかしいきいきと何かがそこらを闊歩したり、眠ったりしているという怪しい光景が、どうしても頭をもたげてくる。
いやいや、主体はやっぱり人間だよ。なーんだ、そりゃそうだよね。めでたしめでたし。なんて言って、それでも大抵は通り過ぎていくんだけれど、そっと振り返ればそこに何かがいるような気配がただよっているのだ。
8月4日にふたご座から数えて「伝達」を意味する3番目のしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、大人になってすっかり忘れてしまっていた気持ちや記憶を、なまなましさとともに取り戻していくことができるかも知れません。
自分のなかの「天」を広げる
明治期の日本に紹介され、爆発的に広がった英語のことわざに「天は自ら助くる者を助く(Heaven helps those who help themselves.)」という言葉がありますが、この場合の天(Heaven)もまた、日常において見失ってしまいがちな“(自分の中の)何か得体の知れないもの”と言ってしまってもいいでしょう。
それと対極的なのは、例えば親や友だちなど身近な他人の反応や、世間がどう思うかばかりを過剰に気にする態度ですが、そういう態度をとってしまっている時というのは大抵が、自分を宇宙の端っこオブ端っこで、誰にも見向きもされず、打ち捨てられているものと感じているのではないでしょうか。つまり、無意識のうちに自分はきっと不幸なはず、幸福にはなれない、というイメージを浮かべてしまっている訳です。
そういうイメージに頭の中を侵されている限り、天はますます縮こまって、得体の知れない何かなど存在する余地もなくなっていくはずです。
その意味で今週のふたご座は、“自分の中の得体の知れないもの”としての「天」を、いかに心のなかで広げ、できるだけ「私しない」でいられるかがテーマとなっていくのだとも言えるでしょう。
ふたご座の今週のキーワード
「私しない」=自分という存在を閉じずに開いておくこと