ふたご座
開けゴマ、そしてすぐさま閉じよゴマ
放流と応酬
今週のふたご座は、『菜の花は触れ合ひながら隠し合ふ』(宮﨑莉々香)という句のごとし。あるいは、本音や真実の王国をひっそりと築いていこうとするような星回り。
春の野を一面の黄色に変えていく菜の花は、よく見てみると、互いに身を寄せ合い、触れ合いながら群生しています。ところが、作者はここでそんな集団としての菜の花に「隠し合う」という、その無邪気な見た目とは裏腹な営みを見出しているのです。
これは女性たちが手仕事を持ち寄って作業しながら交わす何気なく会話をしている場面などを思い浮かべてみるとより分かりやすいでしょう。すなわち、彼女たちは普段は胸のうちに秘めている本音や、夫や子供たちの前ではさらけ出す訳にはいかない恐るべき真実を、淡々と進める作業の合間や何気ない言葉の応酬の中に、そっと放流してはすぐさまそれらを覆い隠していくのです。
逆にいえば、そうして本音や真実を「隠し合う」ことではじめて、彼女たちは互いの魂に触れ合っていくことができるのかも知れません。単純に互いに触れあってキャッキャと喜んでいるのだと思っていた一面の菜の花は、むしろ恐るべき真実や隠された本音の王国だったという訳です。
同様に、20日にふたご座から数えて「社交」を意味する11番目のおひつじ座で新月(日蝕)を迎えていく今週のあなたもまた、そうした裏腹な営みに大きな悦びを見出していくはず。
最後の告白の予行練習
たとえば、本音や真実の王国として真っ先に挙げられるのは死後の世界でしょう。閻魔の前に立たされた魂のなすべきことはただ1つ、最後の告白に他なりません。何もかも語りつくすことで、みずからに必要な決定的な何かを取り戻そうとでもするかのように、そこではみな、藁にもすがるような思いで、今まで言葉にしたことさえなかったような自身の心の奥の奥のもっとも奥底まで言葉にしようとするはず。
とはいえ、自分の身に起きたことを語りつくすのは、想像以上に難しいことです。自分の口が語っていることを、自分でも信じられないような気がしてきた途端、急に舌がもつれて言い淀み、何度も反芻(はんすう)してきた記憶さえ言葉にした端から色褪せ、脆くも崩れ去ってしまう。そんなことはざらにありますし、逆に言えば、最後の告白とは、そうした頑なに口をつぐんでいた沈黙を破った先にやっと辿り着くことができるものなのかも知れません。
その意味で、今週のふたご座は、そうした最後の告白の予行練習として、これまでついぞ破られることのなかった沈黙を、どうにか破っていくことがテーマとなっていくのだと言えます。
ふたご座の今週のキーワード
王国への門を出入りする