ふたご座
綱を渡って歩いていく
人生が幾つもの舞台であるならば
今週のふたご座は、ピーター・ブルックの「クォリティー」のごとし。あるいは、ぎこちなく動いていた自分にいのちを吹き込んでくれたものに思い当たっていくような星回り。
数々のシェイクスピア劇を演出してきたピーター・ブルックが、本物の舞台を生みだすため、長年にわたる実験と実践を重ねて作りあげた取り組みに「タイトロープ」という、有名なワークショップがあります。
理論は役立つし良い本もある。学校にもある程度長所がある。しかし演劇の本物の行為というものは、人の心に触れ、痕跡を残すこと。クォリティーと呼べるものまで、昇華された演劇は、より骨太で、より品格のあるものであり、演劇そのものに生命が息吹き人生が描かれるようになる。役者や演出家がたどる道筋を照らし教え導いてくれる。それこそがまさに深淵の上層に横たわる果てしない“綱渡り”なのだが、いつも人はその深淵にあまりにたやすく落ちてしまう。(『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』)
まさに綱渡りワークショップの核心とも言えるこの「クォリティー」という概念について、ブルックは別の箇所で次のようにも語っています。
手と身体と目が繋がっていると、感じられる瞬間がある。そのことを頭で考え集中しようとすると、クオリティーは消え足が震えだす。でも演技のクオリティーについて、頭で考えずに、自然に自由でいられるなら、動きに意味が与えられ、意識と呼応する。
つまり、何かを読んだり学んだりしても頭で考えるばかりで、それが実際の身体の動きや視線の置き方などに落とし込まれ動きと連動していくのでなければ、誰かの心を動かし痕跡を残すような域にまで達しないし、その域をこそ「クォリティー」と呼ぶのだと。
その意味で、1月15日にふたご座から数えて「息吹」を意味する5番目のてんびん座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、みずからの足運びや指の動き、目線を自然な動きにして、繋げてくれるもの、自身の発揮しうるクォリティーの源が何なのかということを改めて問うてみるといいでしょう。
朝靄の中に聳えたつ神殿の回廊を行くように
例えば、図像などでDNAの螺旋構造を目にすると、いつも昔なにかで見た神殿の回廊が思い起こされます。そうして、記憶のなかの回廊を下りながら、その荘厳さに改めて眩暈を覚える。
ただ一方で、しばらく歩を進めていると、必ずその途中で回廊の脇で眠っている朝靄(あさもや)のごとき怠惰に足をとられ、行く先を阻まれてしまう。それでこちらも、「ああ、これ以上は自力では難しいのだろうな」となんとなく察知する。
そういう夢を繰り返し見させられていたのが2022年のふたご座だとすれば、2023年のあなたは、どこかで糸に引っ張られるようにして回廊の先へと歩みを進めていくような展開に入っていきやすいのだと言えるかも知れません。
きっとそれは、ふたご座の人たちが自信をもって新たなステップ、新しい現実へと歩み始めているから。そして、それが自らを勢いづける‟息吹”によってたえず態勢づけられていることによっていることにも、はっきりと明瞭に気付き始めていくのではないでしょうか。
ふたご座の今週のキーワード
道の先へ行くために