ふたご座
毒と笑いの底光り
※1月10日〜16日の占いは、諸事情により休載いたします。誠に申し訳ございません。次回は1月16日(日)午後10時に配信いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
底知れぬ笑いの深みで
今週のふたご座は、「初笑ひして反り返る僧仏師」(山口燕青)という句のごとし。あるいは、人生の裏とでも言えるところにどっしりと腰を落ちつけていくような星回り。
作者は仏師としての生活を詠って名をあげた異色の存在。「仏師」と「笑い」は普通あまり結びつかないが、どこか豪快な感じがあって、単なる滑稽味のみに堕していない。
この世では、どこまでいっても生老病死の苦しみがついて回り、そこから逃れ出る術はないのだから、いっそ身をもって受け止めた上で、それを笑い飛ばしてしまおうといった、鍛錬された大らかさが漂っている。
身が反り返るほどの大笑いをしておいて、その底にはどこかぬーっとした人間がこちらを覗いているのである。おそらくは、普通の人ならとても笑えないような出来事を前に、作者は「初笑い」をしたのだろう。それも、追い詰められて「笑うしかない」から笑ったのではなく、こちらを飲み込まんと迫ってくる怖れに打ち勝つ象徴的行為として笑い、それがやがて腹のあたりで爆発したのだろう。
2022年1月3日にふたご座から数えて「錬金術的な変成」を意味する8番目の星座であるやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、怒りや怖れなど負の感情に振り回されて当然なときほど、笑ってそれに打ち勝つことを大切にしていきたいところ。
蟲毒の原理
「蟲毒」とは、器の中に毒を持った虫を入れていき、共食いさせてそこで生き残ることでさらに強まった虫の毒気を利用して敵を呪う呪術のこと。同様に、人間であれば誰しも、そうした毒虫のごとき悪や暴力への欲望が眠っているものですが、逆に言えば、こうした暗い欲求をさらに強い欲求によって浄化ないし昇華させていくことができるかこそが、その社会が有している文化の底力になってくる。
例えばそれは、江戸時代の歌舞伎や人形浄瑠璃の演目などに、しばしば極限状況を生きる悪人たちが放逸するサスペンスだったり、血しぶきや生首の飛ぶ凄惨なシチュエーション、濡れ場と殺し場、拷問と男女の契り、苦悶と恋愛とが交錯するような濃厚な官能性のなかで彩られていく「悪」の形象が登場し、庶民たちの抑圧された欲求のはけ口となって人気を博していたような文脈とも相通じていくのではないか。
つまり、道徳的・倫理的にはもちろん「悪」は否定されるが、舞台で繰り広げられる「悪」の行為には生理的・感覚的なところで蠱惑的な引力をもって引き込まれ、肯定されていく、一種の浄化作用的代行がそこで起きていく、ということ。
今週のふたご座もまた、機会があればそうした自分を奥深いところで蠱惑していくようなものや相手にできるだけ体を開いて、わが身に宿った底力を引き出していくべし。
ふたご座の今週のキーワード
カタルシスを引き起こす