ふたご座
アンチ・スマート
ドラマの気配
今週のふたご座は、「葉に気配起りて落つる椿かな」(安積素顔)という句のごとし。あるいは、予感にあえて寄せていこうとするような星回り。
作者は中途失明の盲俳人。掲句には、人間の気弱い哀れさが出ているように思われます。椿の花は花弁が一つ一つ落ちるのではなく、唐突に花が丸ごと落ちるのが特徴です。そこにはかないものの美しさを見る場合もありますが、ここではどちらかというと孤高の厳しさと、そこにやがて訪れるだろう自らの運命を重ねたのかも知れません。
眼で笑えなくなった盲人たちは、つねに口に微笑を浮かべるものですが、同じ盲人でも、その内側に確かな自分を持っていて馬鹿にされない雰囲気を醸し出している人もいれば、どことなく頼りなく感じられて苦笑させられたり、思わずそばに行って支えてやりたくなるような人もいるはずですが、作者はおそらく後者のタイプでしょう。
無理をして強がって見せることも、自己憐憫に酔う訳でもなく、「気配」に神経を集中させてから、すこし慌てたような、驚いたような、そして困ったような顔をしてそれを受け入れていく。そんなしみじみとした人間味が自然と浮かんでくる句です。
20日にふたご座から数えて「ペーソスとユーモア」を意味する3番目のしし座で、上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、みずからの身から果敢にそうした人間臭さを滲ませていきたいところです。
人生のプロット確認
今週は先の景色を少しでも知っておきたいと気持ちが逸るかも知れませんが、まずは来た道を丁寧にたどっていく中で、自分が人生の分かれ道でいかなる動機に基づいて選択を行ってきたのか、それを丁寧に確かめていくことの方がはるかに大切なように思います。
さながら、これまでの自分の自叙伝に手を入れていくように。そろそろ一度落ち着いて、あるいは改めてゆっくり自分を振り返る時間を持ちたい頃合いなのではないでしょうか。
ドラマには終わりがありますが、人生には終わりがなく、それゆえにこそ過去というものはドラマとなり得る。
その意味で今週のふたご座は、あなたの過去を単なる事実やおぼろげな記憶から、確かな傾向と骨格を見出し、それを自分なりのドラマ=物語に変えていくことがテーマとなっていくのだとも言えます。
今週のキーワード
大胆な構成変更