ふたご座
腰を落として踵を踏んで
※2021年3月1日~3月7日の週間占いは、公開を延期とさせていただきます。(2021年2月28日追記)
梅の門
今週のふたご座は、「話しつつ行き過ぎ戻る梅の門」(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、右往左往がおさまっていくような星回り。
話しながら歩いていたら、うっかり目指す家の前を通りすぎてしまった。気が付いて引き返し、家にたどり着くと梅が咲いていた。大意としてはこんなところでしょうか。
句全体にどこかのんびりとした春特有の気分が感じられますが、はじめに通りすぎた際には梅には気付かなかったというところが味噌。
さながら逆行と順行を繰り返す惑星のように、行きつ戻りつしてようやく何かに気が付くことができる。そしてそういう人間を梅の花が迎え入れることで「門」となる。
では、「門」をくぐった人間はどこへ行くのだろうか。寒さに耐えながら辛抱強く咲く梅の花は高潔と忠実の象徴であり、それは“春”という新たな世界への門出でもあるのでしょう。
27日にふたご座から数えて「一つの終わり」を意味する4番目のおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、ようやく苦境を乗り越えたという安堵のなかで新たなサイクルが既に始まりつつあることを実感していけるはず。
昔の日本人の身体所作
右往左往で思い出しましたが、江戸時代くらいまでの日本人は踵を踏んで身体を前に運ぶことですり足気味に歩いていたのだそうです。
現代では、むしろ足を前に出し、腰をひねって、肩を前後させ、手足を振って歩いていますが、これは着物を着ていた当時の日本人においてはまったく見られない所作でした。例えば、芸能記者である平山蘆江が1942年に書いた『日本の芸能』には、次のようにあります。
腰のすわりのよい事も日本人独特の身がまえで、腰がふらついていては芸ごとばかりでなく、身体でする日本本来の動き一切は出来なくなる。剣術、柔術、相撲、馬術、槍術、弓術、何もかもそうなのである。そうでなくともただでさえ強い日本人の腰には近世まで両刀が横たわっていた、あれほど重いものを始終腰に横たえているために自然足どりにも踵にも力が入り(後略)
これはやってみれば分かりますが、重心が上下に揺れない安定した状態で、足を動かしているどのタイミングでも瞬時に攻撃・防御に移れる隙のない歩き方です。
今週のふたご座もまた、発する言葉や外見的な見え方ではなく、こうした服の下のちょっとした動きを通して重心の在り方そのものを変えていくことで、本来の自分らしさを取り戻していこうとするような動きが出てくるでしょう。
今週のキーワード
「浮きて浮かず」「沈みて沈まず」というイメージ