ふたご座
息やすらかに手は休めず
青空ぽかーん
今週のふたご座は、「柿むいて今の青空あるばかり」(大木あまり)という句のごとし。あるいは、さりさりとただ恬淡(てんたん)と生きていくような星回り。
晩秋の、よく晴れた日の青空がただ広がっているばかり。そういう今を生きている。どう生きている。私は、柿をむいている。
言ってしまえばそれだけの句なのですが、この句に命を与えているのは、前五の「柿むいて」の無作為性でしょう。
つまり、柿をむいてあげることで相手に気に入られようとか、できるだけ速くむくことでその能力を認められたいとか、そういう作為的なにおいが一切してこない。ただ手慣れた手つきでさりさりと、何の思い入れもなく柿をむいているだけ。
そして、そんな手元のとどこおりのない手さばきとは別に、窓の向こうに「今の青空」が広がっている。だから何だという訳ではないのですが、「あるばかり」とはそういう情景のことなのではないでしょうか。
そこにスッーっとした静かで深い呼吸のようなものが通っている訳です。
23日に太陽がさそり座に入ると同時に、ふたご座から数えて「世界観の深呼吸」を意味する9番目のみずがめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分なりの「柿むいて」の境地を模索してみるといいでしょう。
焼き芋人生
秋も深まって空気が冷たくなってくると、路肩や公園などで焼き芋屋を見かける機会がチラホラと増えていきます。
大人になると、なかなか落葉を自分でかき集めてそこに芋を埋めて焼き芋を焼くなんてこともしなくなりますが、あれはあれでいいものです。
待っている間、落葉が火と煙とともに天にのぼってゆく光景を前にしていると、思わず「この世の現実とは何だろうか?」という夢想がかき立てられていく。
いってみれば、煙と同じようにこの世の現実も吹けば飛ぶような夢幻のごときもの。その意味で、この現実世界とは何もない「青空」と正反対なのです。慌ただしい日々の中にいるとつい忘れがちなことではありますが、私たちは夢まぼろしと共にくすぶっている焼き芋のようなものなのかも知れません。
時おり煙にせき込みながら、たんたんと芋を焼き、また青空にポカーンとしつつ柿をむく。今週のふたご座は、そんな在り方もあったなということを、思い出していきたいところです。
今週のキーワード
世界観の深呼吸